始めの一歩。




……もちろん話したりはしないんだけど。



『それでも、幸せ……』



なんて思って、しばらくぼんやり授業を受けていると



すっ……



突然彼が手を伸ばし、教科書のある一文を指差した。


何事かと思ってその文章を目で追うと…その文は、現在私の前の席の人が朗読しているものだった。


……金子先生は、勉強する文章を句点ごとに一文ずつ区切って生徒に読ませるんだよね。


って、アレ?


前の人が文章を読み終わる…ってことは!!



『わ、私が読む番じゃんっ!!』



どうやら私、幸せに浸り過ぎてて聞き逃してたみたい。


きっと彼は、そんな私の様子に気付いて教えてくれたんだろう。




< 6 / 28 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop