主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-②
前にも八咫烏には乗ったことがあるので、主さまに手を引っ張られて背中に乗り込んだ息吹は、大きな頭を撫でて頭を下げた。
「八咫烏さん、お願いします」
「かあっ」
甘えたように小さく鳴いた後黒い翼を大きく広げて飛び立つと、久々に主さまと遠出をすることができて嬉しくて仕方なくて、後ろから腰を支えてくれている主さまにもたれ掛った。
「主さま、どの位で着くの?そろそろ日の出が来るけど大丈夫?」
「問題ない。順調に行けば昼過ぎには着く。はしゃいで落ちるなよ」
首を捻って振り返ると、主さまと目が合った。
優しく微笑んでいる主さまにきゅんとした息吹が慌てて視線を戻し、主さまは時折辺りに注意を払いながらもこの前とは違う場所を選び、息吹を楽しませる。
時折海から巨大な海坊主という妖が手を振って来たり、翼を持つ妖が主さまに挨拶をしてきたりで退屈することはなく、相変わらず無愛想な態度で接している主さまに笑みが零れる。
「すごく天気が良くなったね、眠くなってきちゃうよ。主さま、八咫烏さん疲れてると思うから休憩しよ?一緒にお饅頭食べようよ」
「八咫烏がこの程度で疲れたりするものか。…まあいい、少しだけだからな」
息吹は人の身体のままなので疲れ方が違う。
疲れたのは八咫烏ではなく息吹だと悟った主さまは、なるべく山奥を選んで降り立った。
「小川があるからお水飲ませてくるね。八咫烏さん、こっちこっち」
「かあかあ」
息吹の後をよちよちついて行く八咫烏に軽く嫉妬しつつ、夏の暑い日差しを避けて木陰に腰を下ろした主さまは、父の潭月の思惑を量り兼ねて憂鬱な気分になってしまう。
…軽くて何を考えているのかわからない部分が多く、小さな頃はよくからかわれたものだ。
なのであまり好きではない存在なのだが…息吹を連れ帰って一体何をするつもりなのか――
「主さまお待たせ。この辺りもとても綺麗だね。もう半分くらい来てるの?」
「あともう少しだな。…ちょっと寝る。膝を貸せ」
「うん。はいどうぞ」
ごろんと横になって息吹の膝枕にあやかると、息吹は主さまの長い髪を撫でて、同じ色の橙色の髪紐を見せた。
「お揃いの沢山持ってきたから毎日違うのつけようね。主さま、私とても楽しみ」
いつもより輝いて見える息吹の笑顔に見惚れながら、ああ、と小さく返事をした主さまは頬を緩めて息吹の髪紐に触れた。
「八咫烏さん、お願いします」
「かあっ」
甘えたように小さく鳴いた後黒い翼を大きく広げて飛び立つと、久々に主さまと遠出をすることができて嬉しくて仕方なくて、後ろから腰を支えてくれている主さまにもたれ掛った。
「主さま、どの位で着くの?そろそろ日の出が来るけど大丈夫?」
「問題ない。順調に行けば昼過ぎには着く。はしゃいで落ちるなよ」
首を捻って振り返ると、主さまと目が合った。
優しく微笑んでいる主さまにきゅんとした息吹が慌てて視線を戻し、主さまは時折辺りに注意を払いながらもこの前とは違う場所を選び、息吹を楽しませる。
時折海から巨大な海坊主という妖が手を振って来たり、翼を持つ妖が主さまに挨拶をしてきたりで退屈することはなく、相変わらず無愛想な態度で接している主さまに笑みが零れる。
「すごく天気が良くなったね、眠くなってきちゃうよ。主さま、八咫烏さん疲れてると思うから休憩しよ?一緒にお饅頭食べようよ」
「八咫烏がこの程度で疲れたりするものか。…まあいい、少しだけだからな」
息吹は人の身体のままなので疲れ方が違う。
疲れたのは八咫烏ではなく息吹だと悟った主さまは、なるべく山奥を選んで降り立った。
「小川があるからお水飲ませてくるね。八咫烏さん、こっちこっち」
「かあかあ」
息吹の後をよちよちついて行く八咫烏に軽く嫉妬しつつ、夏の暑い日差しを避けて木陰に腰を下ろした主さまは、父の潭月の思惑を量り兼ねて憂鬱な気分になってしまう。
…軽くて何を考えているのかわからない部分が多く、小さな頃はよくからかわれたものだ。
なのであまり好きではない存在なのだが…息吹を連れ帰って一体何をするつもりなのか――
「主さまお待たせ。この辺りもとても綺麗だね。もう半分くらい来てるの?」
「あともう少しだな。…ちょっと寝る。膝を貸せ」
「うん。はいどうぞ」
ごろんと横になって息吹の膝枕にあやかると、息吹は主さまの長い髪を撫でて、同じ色の橙色の髪紐を見せた。
「お揃いの沢山持ってきたから毎日違うのつけようね。主さま、私とても楽しみ」
いつもより輝いて見える息吹の笑顔に見惚れながら、ああ、と小さく返事をした主さまは頬を緩めて息吹の髪紐に触れた。