主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-②
一緒に風呂に入ろう、と言った息吹に対して主さま、猛抗議。
「…なんだそれは。どういうことだ」
「え、何が?」
「……ちょっとこっちに来い」
晴明や胡蝶たちの目があったので、きょとんとしている息吹を離れた場所に連れ込んだ主さまは、息吹の腕を痛くならない程度に掴んでぐっと顔を近付けた。
「俺とは一緒に入りたがらないくせに」
「!そ、それとこれとは別だもん」
「何が別だ。納得のいく説明をしない限りは一緒になど入らせない」
本気なのが主さまの目を見てわかった。
…時々こうして駄々をこねるようなことを言う時があり、呆れるというよりもきゅんとしてしまった息吹は、きょろりと辺りを見回して正面から主さまに抱き着いて硬直させた。
「だって…恥ずかしいし…。胡蝶さんは同性だから平気だけど…主さまは違うでしょ?」
「俺たちは夫婦だぞ。それに何かに書いてあったぞ、一緒に風呂に入る度に…あ、愛が深まると」
「どんな本読んでるの。だってこれから私どんどんお腹が大きくなって違う身体になっちゃうし…これからはもっと無理だよ」
「ではそうなる前に一緒に入る。胡蝶が去ったら…いいな?」
ふう、と耳元に息をかけられてぞくっとした息吹が身体を離そうとすると、主さまは余計に身体を密着させて息吹の耳たぶを甘噛みした。
いつも触れていたくて仕方がないのに息吹は恥ずかしがってすぐ離れてしまうので、こうして不意打ちを狙うしかない。
痛痒いような気持ちいいような感覚に襲われた息吹は、主さまの背中をぽかすか叩いて力いっぱい腕で押して離れて軽く睨みながら見上げる。
「い、今…噛んだ!」
「齧るくらいなんだ、いつものことだろうが。俺が感極まって噛み切らないようせいぜい気を付けろ」
「じゃあ今度齧られたら私も齧り返すから。あ、お腹は齧らないでね」
最後にもう1度息吹をぎゅっと抱きしめた主さまは、今までいちゃいちゃしていたことを全く感じさせないいつもの無表情になると客間に戻った。
「何をしていたの、遅かったじゃないの」
「…なんでもない。俺が居る間にさっさと風呂に入って来い。間違っても足元が滑ったりして息吹を転ばせるな」
「はいはい。お前…意外と過保護なのね」
「晴明に比べればそうでもない」
今夜の百鬼夜行は早めに切り上げて戻って来よう。
数百年ぶりに全員揃う家族のために――
「…なんだそれは。どういうことだ」
「え、何が?」
「……ちょっとこっちに来い」
晴明や胡蝶たちの目があったので、きょとんとしている息吹を離れた場所に連れ込んだ主さまは、息吹の腕を痛くならない程度に掴んでぐっと顔を近付けた。
「俺とは一緒に入りたがらないくせに」
「!そ、それとこれとは別だもん」
「何が別だ。納得のいく説明をしない限りは一緒になど入らせない」
本気なのが主さまの目を見てわかった。
…時々こうして駄々をこねるようなことを言う時があり、呆れるというよりもきゅんとしてしまった息吹は、きょろりと辺りを見回して正面から主さまに抱き着いて硬直させた。
「だって…恥ずかしいし…。胡蝶さんは同性だから平気だけど…主さまは違うでしょ?」
「俺たちは夫婦だぞ。それに何かに書いてあったぞ、一緒に風呂に入る度に…あ、愛が深まると」
「どんな本読んでるの。だってこれから私どんどんお腹が大きくなって違う身体になっちゃうし…これからはもっと無理だよ」
「ではそうなる前に一緒に入る。胡蝶が去ったら…いいな?」
ふう、と耳元に息をかけられてぞくっとした息吹が身体を離そうとすると、主さまは余計に身体を密着させて息吹の耳たぶを甘噛みした。
いつも触れていたくて仕方がないのに息吹は恥ずかしがってすぐ離れてしまうので、こうして不意打ちを狙うしかない。
痛痒いような気持ちいいような感覚に襲われた息吹は、主さまの背中をぽかすか叩いて力いっぱい腕で押して離れて軽く睨みながら見上げる。
「い、今…噛んだ!」
「齧るくらいなんだ、いつものことだろうが。俺が感極まって噛み切らないようせいぜい気を付けろ」
「じゃあ今度齧られたら私も齧り返すから。あ、お腹は齧らないでね」
最後にもう1度息吹をぎゅっと抱きしめた主さまは、今までいちゃいちゃしていたことを全く感じさせないいつもの無表情になると客間に戻った。
「何をしていたの、遅かったじゃないの」
「…なんでもない。俺が居る間にさっさと風呂に入って来い。間違っても足元が滑ったりして息吹を転ばせるな」
「はいはい。お前…意外と過保護なのね」
「晴明に比べればそうでもない」
今夜の百鬼夜行は早めに切り上げて戻って来よう。
数百年ぶりに全員揃う家族のために――