主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-②
主さまが百鬼夜行に出る前にと急いで胡蝶と一緒に風呂に入った息吹は、ここでも撃沈。
周も身体は細いのに胸が大きくて自分の身体と比べてしまって落ち込んだのに…胡蝶も腰が細く胸が大きくて思わず手にしていた手拭いを噛み締めた。
「悔しいっ!私だって胸が大きくなりたい!」
「今からどんどん大きくなるわよ。…期間限定だけれど」
「私多分もう身体成長しないから…いいんです我慢します。でも…羨ましいっ」
胡蝶から言わせれば息吹は胸が小さいというわけでもなかったが…周や自分と比べてみるとその差は歴然なので悔しがる気持ちも分からないでもない。
主さまの屋敷の風呂は大きく、桧の良い香りのする浴槽に脚を伸ばして入っているうちに、息吹を妹のように思えてきだした。
しかもしきりに背中を流したがるし髪も洗ってくれたり甲斐甲斐しい。
胡蝶もさすが主さまと姉弟というところか――本音を口に出すことが苦手なので、されるがままになり、熱いお湯に身を沈めていた。
「お風呂に入ったら次は夕餉ですからね。主さまがまだ居る間にお料理ができたらいいけど…」
「私は人の食事などしないわよ。十六夜もそうでしょ」
「主さまは付き合ってくれますよ。時々食べてくれるし、ちゃんと席についてくれるし、お話もしてくれます」
「へえ…本当に変わったのねあの子」
主さまを“あの子”呼ばわりする胡蝶に頬を緩めた息吹は、まだ平らなお腹を撫でながら胡蝶に笑いかけた。
「お義母様たち…喜んでくれるかなあ」
「待望の孫なのよ、それは喜ぶに決まっているでしょう」
「えへへ、早くお会いしたいなあ。胡蝶さん、逃げちゃ駄目ですからね。私が絶対隣に座るんだから!」
「…逃げないわよ。もう逃げるのに疲れたし…十六夜が私と話をしてくれるようになったから、もういいの」
主さまに向けていたどろどろな感情は少しずつ洗い落とすことができるだろう。
息吹が居なければきっと無理だった。
胡蝶が微笑むと息吹もにっこりして腕に抱き着いた。
周も身体は細いのに胸が大きくて自分の身体と比べてしまって落ち込んだのに…胡蝶も腰が細く胸が大きくて思わず手にしていた手拭いを噛み締めた。
「悔しいっ!私だって胸が大きくなりたい!」
「今からどんどん大きくなるわよ。…期間限定だけれど」
「私多分もう身体成長しないから…いいんです我慢します。でも…羨ましいっ」
胡蝶から言わせれば息吹は胸が小さいというわけでもなかったが…周や自分と比べてみるとその差は歴然なので悔しがる気持ちも分からないでもない。
主さまの屋敷の風呂は大きく、桧の良い香りのする浴槽に脚を伸ばして入っているうちに、息吹を妹のように思えてきだした。
しかもしきりに背中を流したがるし髪も洗ってくれたり甲斐甲斐しい。
胡蝶もさすが主さまと姉弟というところか――本音を口に出すことが苦手なので、されるがままになり、熱いお湯に身を沈めていた。
「お風呂に入ったら次は夕餉ですからね。主さまがまだ居る間にお料理ができたらいいけど…」
「私は人の食事などしないわよ。十六夜もそうでしょ」
「主さまは付き合ってくれますよ。時々食べてくれるし、ちゃんと席についてくれるし、お話もしてくれます」
「へえ…本当に変わったのねあの子」
主さまを“あの子”呼ばわりする胡蝶に頬を緩めた息吹は、まだ平らなお腹を撫でながら胡蝶に笑いかけた。
「お義母様たち…喜んでくれるかなあ」
「待望の孫なのよ、それは喜ぶに決まっているでしょう」
「えへへ、早くお会いしたいなあ。胡蝶さん、逃げちゃ駄目ですからね。私が絶対隣に座るんだから!」
「…逃げないわよ。もう逃げるのに疲れたし…十六夜が私と話をしてくれるようになったから、もういいの」
主さまに向けていたどろどろな感情は少しずつ洗い落とすことができるだろう。
息吹が居なければきっと無理だった。
胡蝶が微笑むと息吹もにっこりして腕に抱き着いた。