主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-②
主さまと共に祠に着いた息吹は、持ってもらっていた手桶から柄杓で水を掬うとからからに乾いてしまっていた祠のてっぺんから水をかけた。
一生懸命背伸びをして水をかけている息吹が可愛らしく、密かに萌えていた主さまだったが…ここに置いてあったという手拭いが本当に地主神から授けられたのかをまだ疑問に思っていた。
「本当に手拭いがここにあったのか?」
「うん、私が離れようとすると追いかけてくるみたいに脚にまとわりついてきたんだよ。まだ疑ってるの?主さまの馬鹿」
「お前はよくよく奇妙なことに出くわす。…特に男に」
「主さま程じゃないと思うけど。主さまだってまだ私が把握してない女性関係があるでしょ。私はないもん」
「……」
ぐうの音が出なくなって黙り込むと、息吹はにんまりと笑って祠の前に立って頭を下げた。
主さまは息吹の横に立ったものの頭は下げなかったが、心の中では本当に地主神が子を授けてくれたのかと思うと、さすがに心の中で感謝を述べる。
もう日差しは以前よりも弱まり、蝉が鳴く声も徐々に減っていって涼しい季節になった。
地主神の宿る大きな石に鮮やかな赤の手拭いを巻き付けた息吹は、ぴょんぴょん跳ねながら主さまの元に戻って手を繋ぐと急かした。
「潭月さんとお義母様ってどの位居てくれると思う?長く居て欲しいんだけど」
「直接そう言ってみればいい。…母上はいいが潭月には早く去ってもらいたい」
「え、どうして?」
「俺の現在の百鬼は潭月から引き継いだ奴らが多い。あいつがここに居ると連中が委縮して緊張してしまう」
「ふうん、嫉妬しちゃうんだね、よくわかりました」
…その指摘は間違ってはいなかったが言い回しが癪に障り、いきなり息吹を抱き上げた主さまは無言のまま山を下り、息吹を慌てさせた。
「や、やだ、主さま下ろして!恥ずかしい!」
「俺をいじめるから罰を与えてやる。このまま母上たちの前に連れ出すからな」
にやりと笑った主さまの唇から尖った牙が見えて噛みつかれるのでは、と一瞬怖いような嬉しいような複雑な気持ちになった息吹が息を止めていると、主さまはふっと笑って山を下っていく。
「…か、噛みつかないの?」
「噛みついてほしいならそうしてやる」
「別に!そんなこと思ってないし!」
いつもの意地張り。
一生懸命背伸びをして水をかけている息吹が可愛らしく、密かに萌えていた主さまだったが…ここに置いてあったという手拭いが本当に地主神から授けられたのかをまだ疑問に思っていた。
「本当に手拭いがここにあったのか?」
「うん、私が離れようとすると追いかけてくるみたいに脚にまとわりついてきたんだよ。まだ疑ってるの?主さまの馬鹿」
「お前はよくよく奇妙なことに出くわす。…特に男に」
「主さま程じゃないと思うけど。主さまだってまだ私が把握してない女性関係があるでしょ。私はないもん」
「……」
ぐうの音が出なくなって黙り込むと、息吹はにんまりと笑って祠の前に立って頭を下げた。
主さまは息吹の横に立ったものの頭は下げなかったが、心の中では本当に地主神が子を授けてくれたのかと思うと、さすがに心の中で感謝を述べる。
もう日差しは以前よりも弱まり、蝉が鳴く声も徐々に減っていって涼しい季節になった。
地主神の宿る大きな石に鮮やかな赤の手拭いを巻き付けた息吹は、ぴょんぴょん跳ねながら主さまの元に戻って手を繋ぐと急かした。
「潭月さんとお義母様ってどの位居てくれると思う?長く居て欲しいんだけど」
「直接そう言ってみればいい。…母上はいいが潭月には早く去ってもらいたい」
「え、どうして?」
「俺の現在の百鬼は潭月から引き継いだ奴らが多い。あいつがここに居ると連中が委縮して緊張してしまう」
「ふうん、嫉妬しちゃうんだね、よくわかりました」
…その指摘は間違ってはいなかったが言い回しが癪に障り、いきなり息吹を抱き上げた主さまは無言のまま山を下り、息吹を慌てさせた。
「や、やだ、主さま下ろして!恥ずかしい!」
「俺をいじめるから罰を与えてやる。このまま母上たちの前に連れ出すからな」
にやりと笑った主さまの唇から尖った牙が見えて噛みつかれるのでは、と一瞬怖いような嬉しいような複雑な気持ちになった息吹が息を止めていると、主さまはふっと笑って山を下っていく。
「…か、噛みつかないの?」
「噛みついてほしいならそうしてやる」
「別に!そんなこと思ってないし!」
いつもの意地張り。