主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-②
主さまと潭月が出かけている間、息吹と周と胡蝶は女だけの水入らずで談笑していた。
「わだかまりが解けたのならば何よりじゃ。この母を恨んでいたのならば悲しゅうて塞ぎ込んでいたやもしれぬ」
「母上を恨んではおりません。恨んだのは…父と十六夜だけです」
「あれはよくよく言葉足らずで誤解を受ける男じゃ。十六夜もよう似ているはずじゃ」
「そうですね、主さまも不器用だから…。でもそこが魅力的っていうか、素敵っていうか…」
もじもじしててれてれする息吹を無性に撫で回したくなった周と胡蝶が息吹ににじり寄ろうとすると、部屋の隅に座っていた雪男がこほんと咳払いをした。
雪男にとって周は先代の妻で目上だが…胡蝶に関しては毎回主さまに嫌がらせをしてくるので良い印象は持っていない。
青い瞳で真っ直ぐ胡蝶を射抜くように睨んでいると、息吹がめっと言って雪男の隣に移動して腕に抱き着いた。
「雪ちゃん、めっ。胡蝶さんは主さまのお姉さんなんだからそんな態度は駄目だよ」
「でもだってさあ、お前もいやな目に遭っただろ?俺だってお前が実家に帰っちまってから寂しかったし…主さまは怖かったし…」
「でも仲直りしたし誤解だってわかったから水に流したの。雪ちゃん…まだそんな態度続けるつもりなら…」
「わ、わかったって!もうしません!」
息吹からひんやりとした冷気を感じた気がして慌てて早口でまくし立てると、息吹はにっこりして周と胡蝶に目配せをした。
「ほう、すでによう躾けておるようじゃな。そこな雪男は未だ横恋慕中か。色男なのにもったいないのう」
肌の色は真っ白で、真っ青な髪と瞳の色が印象的な雪男は妖の世界ではかなりもてもての部類だ。
だが惚れ合った相手でないと身体が溶けてしまうという難点があるために、未だに運命の女には巡り合えていない。
運命の女は息吹だと決めている。
「主さまと離縁したら俺と夫婦になるし。な、息吹」
にこにこしたまま応えない息吹の頬を引っ張っていると、ものすごい殺気が全身を襲って思わず腰を浮かして身構えた。
庭には無表情の主さま。
「…面白い冗談だな」
「は、ははは…。だろ?わ、笑えるよなー…。お、俺ちょっと用事」
そそくさと退散した雪男に手を振る息吹の朗らかさに一同呆れ顔。
「わだかまりが解けたのならば何よりじゃ。この母を恨んでいたのならば悲しゅうて塞ぎ込んでいたやもしれぬ」
「母上を恨んではおりません。恨んだのは…父と十六夜だけです」
「あれはよくよく言葉足らずで誤解を受ける男じゃ。十六夜もよう似ているはずじゃ」
「そうですね、主さまも不器用だから…。でもそこが魅力的っていうか、素敵っていうか…」
もじもじしててれてれする息吹を無性に撫で回したくなった周と胡蝶が息吹ににじり寄ろうとすると、部屋の隅に座っていた雪男がこほんと咳払いをした。
雪男にとって周は先代の妻で目上だが…胡蝶に関しては毎回主さまに嫌がらせをしてくるので良い印象は持っていない。
青い瞳で真っ直ぐ胡蝶を射抜くように睨んでいると、息吹がめっと言って雪男の隣に移動して腕に抱き着いた。
「雪ちゃん、めっ。胡蝶さんは主さまのお姉さんなんだからそんな態度は駄目だよ」
「でもだってさあ、お前もいやな目に遭っただろ?俺だってお前が実家に帰っちまってから寂しかったし…主さまは怖かったし…」
「でも仲直りしたし誤解だってわかったから水に流したの。雪ちゃん…まだそんな態度続けるつもりなら…」
「わ、わかったって!もうしません!」
息吹からひんやりとした冷気を感じた気がして慌てて早口でまくし立てると、息吹はにっこりして周と胡蝶に目配せをした。
「ほう、すでによう躾けておるようじゃな。そこな雪男は未だ横恋慕中か。色男なのにもったいないのう」
肌の色は真っ白で、真っ青な髪と瞳の色が印象的な雪男は妖の世界ではかなりもてもての部類だ。
だが惚れ合った相手でないと身体が溶けてしまうという難点があるために、未だに運命の女には巡り合えていない。
運命の女は息吹だと決めている。
「主さまと離縁したら俺と夫婦になるし。な、息吹」
にこにこしたまま応えない息吹の頬を引っ張っていると、ものすごい殺気が全身を襲って思わず腰を浮かして身構えた。
庭には無表情の主さま。
「…面白い冗談だな」
「は、ははは…。だろ?わ、笑えるよなー…。お、俺ちょっと用事」
そそくさと退散した雪男に手を振る息吹の朗らかさに一同呆れ顔。