主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-②
「しかし晴明。お前が山姫を娶るとはな」


「なに、そう驚くことではないよ。遥か昔から決まっていたことだ」


「は…はあ!?あんたなに寝言ほざいてんだい!?じょ、冗談じゃないよ!」


「そう照れずともよいではないか。どうだ私と山姫で育てた娘は。良い娘だろう?」


真っ赤な顔をして憤っている山姫に涼しげな微笑を返しつつ親馬鹿炸裂の問いかけをした晴明は、潭月がじっくり頷いたのを見て満足。

どこに嫁に出してもおかしくないほどに躾と教養を施して育てたので、実はそういうのに小うるさい潭月や周に認めてもらえたことは素直に嬉しい。

またなんだかひとり蚊帳の外になってしまっている主さまの傍に座っていた


「ねえ主さま。あっちでみんなのお話に加わらないの?」


「…俺はうるさい場が好きじゃない」


「うるさいんじゃなくって、楽しいの間違いでしょ?でも…今日も百鬼夜行に行くんだよね。みんな揃ってて楽しいのに…」


暗に百鬼夜行に行ってほしくないと言われた気がしてつい主さまの頬が緩んでしまうと、息吹がつんを頬を突いてあろうことか両親が揃っている場で膝枕をしてきた。


「お、おい!」


「別にいいでしょ、耳かきしてあげようか。それともお昼寝する?」


――両親の居ない場所でならどちらともしてほしかったが、普段鉄面皮で知られる主さまは素直な感情を出すことができず、伸びてきた息吹の手を振り払って身体を起こした。

主さまがこうするだろうと大体予想していた息吹は怒ることなくにこっと笑って庭に降りると、若葉を抱っこして花を見せてやっていた銀の長くてふかふかの尻尾に包まった。


「ふかふか!銀さん、そろそろ若葉が眠たそうだからお昼寝させるね。抱っこ代わるよ」


「ああそうか、じゃあ頼んだ。おい息吹、あまり尻尾に触るなと言っただろうが。俺が興奮してお前を襲ったらどうするつもりだ」


「殺すつもりだ」


縁側から返ってきた剣のこもった声色に銀が肩を竦めると、潭月と周はひそひそと小声で主さまの態度を笑い合う。


「相変わらず心の狭い奴だ」


「そういうところも父親似じゃな」


主さま、いじられまくり。
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