主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-②
鬼と鬼の戦い
「あ奴に嫁と子ができたというのは真実なのか」
「はい、真実です。幽玄町は最近毎日祭り騒ぎだとか。お頭…どうしやすか」
「どうもこうも…嫁はともかく腹の中の子はあ奴の子だな?すると次の百鬼夜行の主は……」
とある地方のとある森の奥深く――
空を焦がすように燃え上がる炎を生み出している護摩壇の前に座っていた男は、配下の報告を振り返りもせず、炎を見つめながらくつくつと喉で笑った。
「次の百鬼夜行の主は…生まれてくる子かと…」
「ふふふふ、そうか。では今のうちに捻り殺しておかないとなあ」
その男の全身から黒い紫の炎がぶわっと噴き上がる。
長い間百鬼夜行をする連中とその頭を恨んでいたその男の頭からゆっくり二本の角が現れると、報告を行っていた配下は座ったまま後ずさりしながら地面に頭を擦りつけて平伏した。
…その配下の頭にも、二本の角が。
「子…か。子を奪ったならば、あ奴は俺のことを思い出すと思うか?」
「そ、それはもう…当然でございましょう。我々はあなた様が百鬼夜行の主に相応しきお方であることを知っております。どうぞ次こそは…」
「わかっている。俺とあ奴の戦いは終わっていない。あ奴は終わらせたつもりなのだろうが…俺は諦めないぞ。あ奴の大切なものを根こそぎ奪ってやろう」
護摩壇の炎がいっそう大きく燃え上がった。
彼の感情に左右されるように空を焦がし、炎に魅せられて寄ってきた多くの蝶をも焦がし、空に舞い上がる。
男はゆっくり立ち上がると、黒き狩衣の袖を払い、振り返った。
数えきれないほどの配下が平伏して悲願を望んでいる様子に、柔和で虫一匹殺したことなどないというような優しき美貌の妖が彼らに微笑む。
「酒呑童子様!」
「お頭!」
「幽玄町に乗り込みましょう!」
酒呑童子と呼ばれた男が何事か呟いたが、、怒号のような歓声にその声はかき消される。
十六夜…
次こそは、お前の全てを根こそぎ奪ってやる。
そう呟いたが、湧き上がる声にかき消されつつも、酒呑童子は笑みを絶やさなかった。
「はい、真実です。幽玄町は最近毎日祭り騒ぎだとか。お頭…どうしやすか」
「どうもこうも…嫁はともかく腹の中の子はあ奴の子だな?すると次の百鬼夜行の主は……」
とある地方のとある森の奥深く――
空を焦がすように燃え上がる炎を生み出している護摩壇の前に座っていた男は、配下の報告を振り返りもせず、炎を見つめながらくつくつと喉で笑った。
「次の百鬼夜行の主は…生まれてくる子かと…」
「ふふふふ、そうか。では今のうちに捻り殺しておかないとなあ」
その男の全身から黒い紫の炎がぶわっと噴き上がる。
長い間百鬼夜行をする連中とその頭を恨んでいたその男の頭からゆっくり二本の角が現れると、報告を行っていた配下は座ったまま後ずさりしながら地面に頭を擦りつけて平伏した。
…その配下の頭にも、二本の角が。
「子…か。子を奪ったならば、あ奴は俺のことを思い出すと思うか?」
「そ、それはもう…当然でございましょう。我々はあなた様が百鬼夜行の主に相応しきお方であることを知っております。どうぞ次こそは…」
「わかっている。俺とあ奴の戦いは終わっていない。あ奴は終わらせたつもりなのだろうが…俺は諦めないぞ。あ奴の大切なものを根こそぎ奪ってやろう」
護摩壇の炎がいっそう大きく燃え上がった。
彼の感情に左右されるように空を焦がし、炎に魅せられて寄ってきた多くの蝶をも焦がし、空に舞い上がる。
男はゆっくり立ち上がると、黒き狩衣の袖を払い、振り返った。
数えきれないほどの配下が平伏して悲願を望んでいる様子に、柔和で虫一匹殺したことなどないというような優しき美貌の妖が彼らに微笑む。
「酒呑童子様!」
「お頭!」
「幽玄町に乗り込みましょう!」
酒呑童子と呼ばれた男が何事か呟いたが、、怒号のような歓声にその声はかき消される。
十六夜…
次こそは、お前の全てを根こそぎ奪ってやる。
そう呟いたが、湧き上がる声にかき消されつつも、酒呑童子は笑みを絶やさなかった。