主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-②
「主さま…なんか慌ただしいね。雪ちゃん、何かあったの?どう思う?」
「さあ。まあ主さまは百鬼夜行束ねてる人だし、最近平和だったからのんびりしてたけど。実際は毎日戦いに明け暮れてるわけだしな」
「戦い……」
息吹が心配するようなことを言ってしまった雪男ははっとして後悔したが、後の祭り。
息吹の表情は曇り、産着を縫う手が止まってしまうと雪男は焦りながら息吹の頭をひんやりとした手で撫でた。
「大丈夫だって。主さまは毎日無傷で帰ってくるだろ?俺たち百鬼は強いし、主さまはもっともっと強いんだからさ」
「…鬼八さんみたいに主さまを狙う人も居るってこと?」
「居なくはないけど、居たとしても心配すんなって。さ、そろそろ百鬼夜行の時間だから戻るか?」
「うん。雪ちゃん…主さまを守ってね」
「わかってるって」
ようやく笑みを見せた息吹の肩を抱いて大広間の方に戻ると、庭にはすでに百鬼たちが大集結していた。
それも何だかみんな強張った表情をしていたので、再び息吹の表情が曇って囲炉裏の前でちょこんと座りこむ。
「主さま……」
「行って来る。雪男と山姫はいつものように。もうすぐ晴明も到着する。息吹…お前は晴明の傍に」
「何があったの?私に言えないこと?教えてくれなきゃ行っちゃ駄目!」
久しぶりに息吹に駄々をこねられた主さまはきゅんとしつつもふっと笑って正座して膝の上で拳を握り込んでいる息吹の頬を引っ張った。
「俺にちょっかいを出す奴が妖を集めて悪さをしようとしている。制裁を加えに行くだけだ」
「…危険なこと?」
「手ごわい奴ではあるが、俺の方が強い。お前はいつものように俺を待ち、いつものように出迎えてくれればいい。わかったか?」
「はい。主さま気を付けてね。みんなも主さまを守ってあげてね!」
「任せとけ息吹!」
百鬼たちも次々と息吹の願いに応えて声を上げる。
主さまは懐をぽんと叩いて鈴の音を鳴らすと、空を駆け上がって行ってしまった。
「行ってらっしゃい…主さま」
不安は拭えないが、主さまなら大丈夫。
全幅の信頼を置いている息吹は、再び縫いかけの産着を引き寄せてひと針ひと針想いを込めながら縫い続けた。
「さあ。まあ主さまは百鬼夜行束ねてる人だし、最近平和だったからのんびりしてたけど。実際は毎日戦いに明け暮れてるわけだしな」
「戦い……」
息吹が心配するようなことを言ってしまった雪男ははっとして後悔したが、後の祭り。
息吹の表情は曇り、産着を縫う手が止まってしまうと雪男は焦りながら息吹の頭をひんやりとした手で撫でた。
「大丈夫だって。主さまは毎日無傷で帰ってくるだろ?俺たち百鬼は強いし、主さまはもっともっと強いんだからさ」
「…鬼八さんみたいに主さまを狙う人も居るってこと?」
「居なくはないけど、居たとしても心配すんなって。さ、そろそろ百鬼夜行の時間だから戻るか?」
「うん。雪ちゃん…主さまを守ってね」
「わかってるって」
ようやく笑みを見せた息吹の肩を抱いて大広間の方に戻ると、庭にはすでに百鬼たちが大集結していた。
それも何だかみんな強張った表情をしていたので、再び息吹の表情が曇って囲炉裏の前でちょこんと座りこむ。
「主さま……」
「行って来る。雪男と山姫はいつものように。もうすぐ晴明も到着する。息吹…お前は晴明の傍に」
「何があったの?私に言えないこと?教えてくれなきゃ行っちゃ駄目!」
久しぶりに息吹に駄々をこねられた主さまはきゅんとしつつもふっと笑って正座して膝の上で拳を握り込んでいる息吹の頬を引っ張った。
「俺にちょっかいを出す奴が妖を集めて悪さをしようとしている。制裁を加えに行くだけだ」
「…危険なこと?」
「手ごわい奴ではあるが、俺の方が強い。お前はいつものように俺を待ち、いつものように出迎えてくれればいい。わかったか?」
「はい。主さま気を付けてね。みんなも主さまを守ってあげてね!」
「任せとけ息吹!」
百鬼たちも次々と息吹の願いに応えて声を上げる。
主さまは懐をぽんと叩いて鈴の音を鳴らすと、空を駆け上がって行ってしまった。
「行ってらっしゃい…主さま」
不安は拭えないが、主さまなら大丈夫。
全幅の信頼を置いている息吹は、再び縫いかけの産着を引き寄せてひと針ひと針想いを込めながら縫い続けた。