主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-②
実際問題、隙あらば愛息の妻となった女をいびってやろうと思っていた周だったが――
息吹は可愛らしいし、料理も上手いし、気遣いもできれば気立てもいい。
ただ…人であるのが難点ではあるが、その問題については先日潭月から息吹が木花咲耶姫の生まれ変わりであることを教えられていた。
愛した女が人だった――
そのことで主さまが悩み抜いて苦しんだ時期があったという。
だが何にも興味を抱かない息子が唯一愛した女は妖と同等…いや、神と同等の寿命を手に入れた。
…目の前に居る息吹がその存在であることは俄かに信じられなかったが…周の黒瞳は、息吹の奥底で眠っている木花咲耶姫の存在を確かに捉えていた。
「美味じゃ。このような食事をしたのはどれほどぶりか」
「お口に合ってよかった!主さまはどう?焼き茄子美味しい?」
「ああ、美味い。そういえばお前が作ったあれはどうなっている?」
「あっ、そうだ!ちょっと待ってて下さいねっ」
今からは庭が一望でき、そこで八咫烏がよちよち歩いているのを見つけた息吹が草履を履いて近寄ると、真ん中の脚から風呂敷を外して嘴を撫でてやる。
また甘えたようにくるると鳴いて息吹の肩に嘴を擦りつけている八咫烏を見た主さまは思わず小さな舌打ちをして潭月ににやにや笑われると、箸置きを投げつけた。
「こっちを見るな」
「いやいや、お前はなんだか感じが変わったな。俺の息子よ、どうだ今宵は共に温泉でも…」
「断る。ちなみに息吹を誘いでもしたらただでは済まないからな」
「おお怖い怖い」
「お待たせしましたっ。あのこれ…お家でお饅頭とお団子を作って来たんです。よかったら後で一緒に…」
食卓に風呂敷を広げると、中には餡子餅やみたらし団子が山のように作られており、こんなに作っていたのを知らなかった主さまは思わず噴き出して声を上げて笑った。
「ふふっ、お前こんなに作ったのか?百鬼たちが食っていたのを見てはいたが…あいつらが食ってもまだこんなに残っていたのか」
「調子に乗っちゃったの。甘いものが苦手でなければ一緒に…」
潭月と周は顔を見合わせて箸を置くと、可愛らしい嫁を手に入れた息子が優しい笑みを浮かべていることに感動して、頷いた。
「腹ごなしに後でわたくしと温泉へ入らぬか。その後皆で食そう」
「お義母様とお風呂っ?わあ、是非!」
主さま、軽く嫉妬。
息吹は可愛らしいし、料理も上手いし、気遣いもできれば気立てもいい。
ただ…人であるのが難点ではあるが、その問題については先日潭月から息吹が木花咲耶姫の生まれ変わりであることを教えられていた。
愛した女が人だった――
そのことで主さまが悩み抜いて苦しんだ時期があったという。
だが何にも興味を抱かない息子が唯一愛した女は妖と同等…いや、神と同等の寿命を手に入れた。
…目の前に居る息吹がその存在であることは俄かに信じられなかったが…周の黒瞳は、息吹の奥底で眠っている木花咲耶姫の存在を確かに捉えていた。
「美味じゃ。このような食事をしたのはどれほどぶりか」
「お口に合ってよかった!主さまはどう?焼き茄子美味しい?」
「ああ、美味い。そういえばお前が作ったあれはどうなっている?」
「あっ、そうだ!ちょっと待ってて下さいねっ」
今からは庭が一望でき、そこで八咫烏がよちよち歩いているのを見つけた息吹が草履を履いて近寄ると、真ん中の脚から風呂敷を外して嘴を撫でてやる。
また甘えたようにくるると鳴いて息吹の肩に嘴を擦りつけている八咫烏を見た主さまは思わず小さな舌打ちをして潭月ににやにや笑われると、箸置きを投げつけた。
「こっちを見るな」
「いやいや、お前はなんだか感じが変わったな。俺の息子よ、どうだ今宵は共に温泉でも…」
「断る。ちなみに息吹を誘いでもしたらただでは済まないからな」
「おお怖い怖い」
「お待たせしましたっ。あのこれ…お家でお饅頭とお団子を作って来たんです。よかったら後で一緒に…」
食卓に風呂敷を広げると、中には餡子餅やみたらし団子が山のように作られており、こんなに作っていたのを知らなかった主さまは思わず噴き出して声を上げて笑った。
「ふふっ、お前こんなに作ったのか?百鬼たちが食っていたのを見てはいたが…あいつらが食ってもまだこんなに残っていたのか」
「調子に乗っちゃったの。甘いものが苦手でなければ一緒に…」
潭月と周は顔を見合わせて箸を置くと、可愛らしい嫁を手に入れた息子が優しい笑みを浮かべていることに感動して、頷いた。
「腹ごなしに後でわたくしと温泉へ入らぬか。その後皆で食そう」
「お義母様とお風呂っ?わあ、是非!」
主さま、軽く嫉妬。