主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-②
食われる。
骨や肉を食む音が聞こえる。
それでも痛みはないし、出血もない。
どうしてこんなことに?
妖に食われて死ぬはずではなかったのだろうか?
どうして再生するのだろうか?
私は…人ではないのだろうか?
「肉が無限に湧き出てくる…!俺は幸運だ!これでずっと飯にありつける!」
「やめて……っ、やめて!」
竹林に椿姫の悲鳴が轟く。
それは反響して、うぐいすの声をかき消して、屋敷にまで届いた。
「椿…?!椿や、どこに居るのだ…!?」
食われながらぼんやりと屋敷の方の顔を向けると、武装した使用人と父親が驚愕に立ち止まってこちらを見ていた。
着ていた打掛は小鬼に剥がされてほとんど裸と言ってもいい有様。
しかも…小鬼に馬乗りにされて食われて…それでも生きている。
生きている。
食われているのに。
「椿…!?そなた……!」
「おとう、様……助けて、下さい……」
消え入るような声でそう呟いたが恐怖に戦く父たちの脚は動かず、もう1度、助けを求める。
「お父様…、助けて…!」
「!お前たち、あの小鬼を!」
「は、はっ!」
武器を手に駆け寄ってくる使用人たち。
馬乗りになっていた小鬼は肉を食むのに夢中で、腕利きの男の一閃でぽとりと首が地面に落ちた。
ぼんやりしている椿姫を妖でみ見るかのような目で見た使用人は、後ずさりしながら離れてゆく。
「ば…化け物!!」
「ばけ……もの………?」
起き上がった椿姫は、自身の身体を見下ろす。
…食われた様子はどこにもなく、もちろん出血の痕跡もない。
一体何が起きたのだろうかと考えていると、あの優しかった父親は耳を疑う発言をした。
「と、捕らえろ!わしの娘の姿をした妖め!娘はどこだ!?」
「お父様…!私が、椿です!」
使用人たちに脇を抱えられて引きずられながらも椿姫が叫ぶ。
叫んでも叫んでも、父親は振り返らなかった。
…振り返らなかった。
骨や肉を食む音が聞こえる。
それでも痛みはないし、出血もない。
どうしてこんなことに?
妖に食われて死ぬはずではなかったのだろうか?
どうして再生するのだろうか?
私は…人ではないのだろうか?
「肉が無限に湧き出てくる…!俺は幸運だ!これでずっと飯にありつける!」
「やめて……っ、やめて!」
竹林に椿姫の悲鳴が轟く。
それは反響して、うぐいすの声をかき消して、屋敷にまで届いた。
「椿…?!椿や、どこに居るのだ…!?」
食われながらぼんやりと屋敷の方の顔を向けると、武装した使用人と父親が驚愕に立ち止まってこちらを見ていた。
着ていた打掛は小鬼に剥がされてほとんど裸と言ってもいい有様。
しかも…小鬼に馬乗りにされて食われて…それでも生きている。
生きている。
食われているのに。
「椿…!?そなた……!」
「おとう、様……助けて、下さい……」
消え入るような声でそう呟いたが恐怖に戦く父たちの脚は動かず、もう1度、助けを求める。
「お父様…、助けて…!」
「!お前たち、あの小鬼を!」
「は、はっ!」
武器を手に駆け寄ってくる使用人たち。
馬乗りになっていた小鬼は肉を食むのに夢中で、腕利きの男の一閃でぽとりと首が地面に落ちた。
ぼんやりしている椿姫を妖でみ見るかのような目で見た使用人は、後ずさりしながら離れてゆく。
「ば…化け物!!」
「ばけ……もの………?」
起き上がった椿姫は、自身の身体を見下ろす。
…食われた様子はどこにもなく、もちろん出血の痕跡もない。
一体何が起きたのだろうかと考えていると、あの優しかった父親は耳を疑う発言をした。
「と、捕らえろ!わしの娘の姿をした妖め!娘はどこだ!?」
「お父様…!私が、椿です!」
使用人たちに脇を抱えられて引きずられながらも椿姫が叫ぶ。
叫んでも叫んでも、父親は振り返らなかった。
…振り返らなかった。