主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-②
「またやっちゃった…。後で主さまに謝らなきゃ」
「お前は頑張り過ぎなんだよ。主さまが帰って来るまで寝てりゃいいんだ。最近ぐっすり寝てないだろ?それに少し痩せたんじゃないのか?」
「え、わかる?雪ちゃんすごい!主さまは多分気付いてないのに」
また十程の年齢に見える雪男だが、実年齢は妖の歳で数えれば青年の域だ。
だが息吹は見た目で判断して、見上げてくる雪男の頭を撫でてひょいっと抱っこした。
「ちょ、こら!何すんだよ!やめろって!」
「雪ちゃん可愛い。いつになったらおっきくなれるんだろうね。ちっちゃい雪ちゃんもいいけど、おっきい雪ちゃんはかっこよくて素敵だから、早く元に戻れるといいね」
――息吹にべた惚れの雪男は息吹に抱っこされてもがきつつもまんざらではなく、ついにやけてしまうと…背後に殺気を感じてぞくっと背筋を震わせた。
「お、俺、降りる降りる!今すぐ降りる!降ろしてくれ!」
「いいけどどうしたの?…あ、主さま」
「…何をしている」
晴明に迫られて息吹に小言を言いに来た主さまが見たのは、小さな雪男と息吹がいちゃいちゃしているように見える図だ。
夫婦になったとはいえ雪男は息吹を諦めた風ではなく、いちゃつこうとすると何かと言っては邪魔してくる。
今も自分の目を盗んで息吹に抱っこされているのを見て小さな舌打ちを打つと、雪男はそそくさと逃げて行った。
「主さま…ごめんね、寝坊しちゃった…。起こしちゃったよね?主さまは寝てていいよ」
「…俺はもう十分寝た。だがお前は寝ていないじゃないか。目の下にくまができてるぞ。まるで俺が朝まで起きていろとお前に強制しているみたいじゃないか」
驚いた息吹は主さまに駆け寄って濃緑の帯を掴むと必死の形相で見上げながら訴えた。
「ち、違うよ私が勝手に……主さま…もしかして父様に何か言われたの?もお父様ったら!主さま違うの、私ちゃんと寝てるから。だから怒らないで…」
「怒っていない。俺が言いたいのは、俺が帰るまではちゃんと寝ていてくれ、ということだ。これから今後一切我慢してまで起きているのをやめろ。わかったか?」
「…はい…。主さまごめんなさい…」
そっと抱き着いてきた息吹を抱きしめながら、耳元でぼそりと呟いた。
「お前が痩せていること位気付いていた。俺が食いたくなるように太れ。でないと子も望めないぞ」
「主さまは助平だからすぐ赤ちゃんできるよ。父様と母様に早く孫を見せてあげなくちゃ」
主さまはにやけそうになる口元を必死で引き結びながら、真面目くさって頷いた。
「お前は頑張り過ぎなんだよ。主さまが帰って来るまで寝てりゃいいんだ。最近ぐっすり寝てないだろ?それに少し痩せたんじゃないのか?」
「え、わかる?雪ちゃんすごい!主さまは多分気付いてないのに」
また十程の年齢に見える雪男だが、実年齢は妖の歳で数えれば青年の域だ。
だが息吹は見た目で判断して、見上げてくる雪男の頭を撫でてひょいっと抱っこした。
「ちょ、こら!何すんだよ!やめろって!」
「雪ちゃん可愛い。いつになったらおっきくなれるんだろうね。ちっちゃい雪ちゃんもいいけど、おっきい雪ちゃんはかっこよくて素敵だから、早く元に戻れるといいね」
――息吹にべた惚れの雪男は息吹に抱っこされてもがきつつもまんざらではなく、ついにやけてしまうと…背後に殺気を感じてぞくっと背筋を震わせた。
「お、俺、降りる降りる!今すぐ降りる!降ろしてくれ!」
「いいけどどうしたの?…あ、主さま」
「…何をしている」
晴明に迫られて息吹に小言を言いに来た主さまが見たのは、小さな雪男と息吹がいちゃいちゃしているように見える図だ。
夫婦になったとはいえ雪男は息吹を諦めた風ではなく、いちゃつこうとすると何かと言っては邪魔してくる。
今も自分の目を盗んで息吹に抱っこされているのを見て小さな舌打ちを打つと、雪男はそそくさと逃げて行った。
「主さま…ごめんね、寝坊しちゃった…。起こしちゃったよね?主さまは寝てていいよ」
「…俺はもう十分寝た。だがお前は寝ていないじゃないか。目の下にくまができてるぞ。まるで俺が朝まで起きていろとお前に強制しているみたいじゃないか」
驚いた息吹は主さまに駆け寄って濃緑の帯を掴むと必死の形相で見上げながら訴えた。
「ち、違うよ私が勝手に……主さま…もしかして父様に何か言われたの?もお父様ったら!主さま違うの、私ちゃんと寝てるから。だから怒らないで…」
「怒っていない。俺が言いたいのは、俺が帰るまではちゃんと寝ていてくれ、ということだ。これから今後一切我慢してまで起きているのをやめろ。わかったか?」
「…はい…。主さまごめんなさい…」
そっと抱き着いてきた息吹を抱きしめながら、耳元でぼそりと呟いた。
「お前が痩せていること位気付いていた。俺が食いたくなるように太れ。でないと子も望めないぞ」
「主さまは助平だからすぐ赤ちゃんできるよ。父様と母様に早く孫を見せてあげなくちゃ」
主さまはにやけそうになる口元を必死で引き結びながら、真面目くさって頷いた。