主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-②
へその緒を切った我が子を腕に抱かせてもらった。
まだ真っ赤で、元気な産声を上げ続けている赤ちゃんは可愛らしくて、一気に視界が歪んだ息吹は全身の力が抜けながらも主さまの方に顔を向けた。
「主さま……」
「よく…よく産んでくれた。息吹……ありがとう」
声が震えている気がした。
自分の視界が歪んでいるせいか、主さまの目元もなんだか歪んでいる気がしてじっと見ていると、まだ絶対安静の主さまは腕を伸ばして小さな紅葉のような赤子の手に触れた。
「お前に似ているかもしれないな」
「違うよ…主さまに似てると思うよ。ほら見て、目元とかそっくり」
「十六夜、私がそなたの代わりに産湯で清めてやるが良いか」
「晴明……頼んだ」
晴明が用意していた桶に張った湯に赤子を浸して身体を清めた。
息吹は体力を使い尽くしてしまったので主さまと同じく見守ることしかできなかったが、産湯で洗われて気持ちよくなったのか、赤子は泣くのをやめて大人しくなった。
「父様…赤ちゃんの抱っこ上手だね」
「密かに練習していたのだよ。私とて孫をあやしたり遊んでやったりしたい。ほら綺麗になったよ」
真っ新な産着を着せられた赤子が我が手に戻ってくると、晴明は颯爽と腰を上げて山姫に指示を出した。
「ここは一旦落ち着いた。私は酒呑童子と椿姫の様子を見て来る。息吹、ここには立ち入らせぬ故安心しなさい」
「はい。父様…椿さんをよろしくお願いします」
晴明が部屋を出て行った後、息吹は赤子を腕に抱いて山姫に身体を支えてもらいながら身体を起こした。
主さまが見守る中、胸元を緩めてはじめてのお乳をあげようとした時、主さまがぷいっと顔を背けた。
「主さま?」
「……」
「お乳をあげようと思うの。見たくないの?」
「………」
…耳が真っ赤だ。
母親として当然のことをしようとしているだけなのに、そんな反応をされるととても恥ずかしくなってきた息吹は主さまを責めた。
「主さまひどい!お、お乳あげるだけなのにそんな反応しなくったって…」
「……」
こんなやりとりは、久しぶりだった。
まだ真っ赤で、元気な産声を上げ続けている赤ちゃんは可愛らしくて、一気に視界が歪んだ息吹は全身の力が抜けながらも主さまの方に顔を向けた。
「主さま……」
「よく…よく産んでくれた。息吹……ありがとう」
声が震えている気がした。
自分の視界が歪んでいるせいか、主さまの目元もなんだか歪んでいる気がしてじっと見ていると、まだ絶対安静の主さまは腕を伸ばして小さな紅葉のような赤子の手に触れた。
「お前に似ているかもしれないな」
「違うよ…主さまに似てると思うよ。ほら見て、目元とかそっくり」
「十六夜、私がそなたの代わりに産湯で清めてやるが良いか」
「晴明……頼んだ」
晴明が用意していた桶に張った湯に赤子を浸して身体を清めた。
息吹は体力を使い尽くしてしまったので主さまと同じく見守ることしかできなかったが、産湯で洗われて気持ちよくなったのか、赤子は泣くのをやめて大人しくなった。
「父様…赤ちゃんの抱っこ上手だね」
「密かに練習していたのだよ。私とて孫をあやしたり遊んでやったりしたい。ほら綺麗になったよ」
真っ新な産着を着せられた赤子が我が手に戻ってくると、晴明は颯爽と腰を上げて山姫に指示を出した。
「ここは一旦落ち着いた。私は酒呑童子と椿姫の様子を見て来る。息吹、ここには立ち入らせぬ故安心しなさい」
「はい。父様…椿さんをよろしくお願いします」
晴明が部屋を出て行った後、息吹は赤子を腕に抱いて山姫に身体を支えてもらいながら身体を起こした。
主さまが見守る中、胸元を緩めてはじめてのお乳をあげようとした時、主さまがぷいっと顔を背けた。
「主さま?」
「……」
「お乳をあげようと思うの。見たくないの?」
「………」
…耳が真っ赤だ。
母親として当然のことをしようとしているだけなのに、そんな反応をされるととても恥ずかしくなってきた息吹は主さまを責めた。
「主さまひどい!お、お乳あげるだけなのにそんな反応しなくったって…」
「……」
こんなやりとりは、久しぶりだった。