主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-②
息吹の腕に抱かれてすやすや眠っている生まれたての赤子は、本当に可愛らしかった。
ただ決定的に違うのは――
左右の額から生えている小さな角の存在。
人には、無いもの。
酒呑童子と椿姫の視線に気づいた息吹は、小さな角を人差し指で擦って赤子が気持ちよさそうに口を開けた姿をふたりに見せた。
「角を触ると気持ちいいみたいなの。主さまもそうだから、酒呑童子さんもそうでしょ?」
「弱点は他人には教えない」
そう突っぱねてはみたものの、主さまも角が弱点だったのかと思うとつい笑みが零れ出た酒呑童子は表情を引き締めて椿姫を畳の上に下ろした。
「俺のことはどうでもいい。椿姫をどうにかしてくれ。…もう二度と俺に食われないようにしてくれ」
「椿姫の身体を調べなくてはならぬ。私は妖半だが人の血が入っている故に食うことはない。任せてはもらえぬか」
「彼方様、私はいいのです。晴明様にお任せいたします」
反対意見を述べようと口を開きかけた酒呑童子を制した椿姫は、息吹の傍らに座って小さくてすぐに壊れてしまいそうな赤子の頬に恐る恐る触れた。
…角がある以外は人と何ら変わりはない。
そして種族が違っても、こうして愛の結晶は生まれてくる――
「残された時間で…私にも赤ちゃんができるでしょうか」
ぽつりとそう発した椿姫の言葉に肩を揺らして大仰な反応を見せた酒呑童子は、主さまとのにらみ合いをやめて椿姫の隣で膝をつく。
まっすぐに見つめられて恥ずかしくなった椿姫は、着物の袖で顔を隠しながらちらりと上目遣いで酒呑童子に視線を返す。
「駄目……でしょうか…?」
「い、いや、そういうわけじゃないが……」
「うんすごくいいと思うよ!この子のお友達になってくれるともっと嬉しいな」
酒呑童子は、真っ白な肌が印象的な赤子の手にぷにっと触れると指を握り返されて慌てて手を離しながら、苦笑した。
「この子が次代の百鬼夜行の主か」
「…力があれば、そういうことになる」
待ち望んだ男の子の誕生――
主さまは痛みに耐えながらも、我が子に手を伸ばしてまだ少ないがさらさらの髪に触れて微笑した。
ただ決定的に違うのは――
左右の額から生えている小さな角の存在。
人には、無いもの。
酒呑童子と椿姫の視線に気づいた息吹は、小さな角を人差し指で擦って赤子が気持ちよさそうに口を開けた姿をふたりに見せた。
「角を触ると気持ちいいみたいなの。主さまもそうだから、酒呑童子さんもそうでしょ?」
「弱点は他人には教えない」
そう突っぱねてはみたものの、主さまも角が弱点だったのかと思うとつい笑みが零れ出た酒呑童子は表情を引き締めて椿姫を畳の上に下ろした。
「俺のことはどうでもいい。椿姫をどうにかしてくれ。…もう二度と俺に食われないようにしてくれ」
「椿姫の身体を調べなくてはならぬ。私は妖半だが人の血が入っている故に食うことはない。任せてはもらえぬか」
「彼方様、私はいいのです。晴明様にお任せいたします」
反対意見を述べようと口を開きかけた酒呑童子を制した椿姫は、息吹の傍らに座って小さくてすぐに壊れてしまいそうな赤子の頬に恐る恐る触れた。
…角がある以外は人と何ら変わりはない。
そして種族が違っても、こうして愛の結晶は生まれてくる――
「残された時間で…私にも赤ちゃんができるでしょうか」
ぽつりとそう発した椿姫の言葉に肩を揺らして大仰な反応を見せた酒呑童子は、主さまとのにらみ合いをやめて椿姫の隣で膝をつく。
まっすぐに見つめられて恥ずかしくなった椿姫は、着物の袖で顔を隠しながらちらりと上目遣いで酒呑童子に視線を返す。
「駄目……でしょうか…?」
「い、いや、そういうわけじゃないが……」
「うんすごくいいと思うよ!この子のお友達になってくれるともっと嬉しいな」
酒呑童子は、真っ白な肌が印象的な赤子の手にぷにっと触れると指を握り返されて慌てて手を離しながら、苦笑した。
「この子が次代の百鬼夜行の主か」
「…力があれば、そういうことになる」
待ち望んだ男の子の誕生――
主さまは痛みに耐えながらも、我が子に手を伸ばしてまだ少ないがさらさらの髪に触れて微笑した。