主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-②
返ってきた唇の感触はとてもやわらかくて、侵食するように深く口づけをすると、朔が急に泣き始めた。
はっとなって身体を起こした主さまは、久々に息吹に触れることができて早速感情的になりそうになった主さまは、小さな角を撫でて泣き止ませた。
息吹は顔を真っ赤にして口ごもり、主さまも耳を真っ赤にしてうろたえる。
「…すまない」
「う、ううん、主さま寝た方がいいよ。お腹に穴が空いてるんだから。もう大丈夫なの…?」
「地主神の薬が効いたようだ。あれが無ければあるいは…」
怖い想像が頭を駆け巡った息吹は、むにゃむにゃ口を動かしている朔を抱きしめてふわりと笑った。
「動けるようになったら、一緒に地主神の祠に行こう」
「うん。あと…椿姫さんはどうなっちゃうのかなあ?」
「晴明がどうにかする。俺も方法を探してみる。…お前は気にせず朔に集中してくれ」
「はい。朔ちゃん主さまに似て本当に可愛い。きっとかっこよくなって引っ張りだこになっちゃうね」
身体を横たえた主さまは、頬が熱くなるのを感じながら顔を背けて息吹を見ることができなくなった。
主さまがそんな反応を見せることをわかっていた息吹は、あたたかい朔を抱っこしているうちに眠たくなっていつの間にか眠りに落ちてしまった。
「息吹は寝たのか。気力体力ともに使い果たしただろうからねえ」
「晴明…」
部屋へ入って来た晴明は、すやすや眠っている息吹と赤子を微笑ましく見つめて袖を払って座った。
「もう名はつけたのかい?」
「…朔と名付けた」
「ああ、やはり月の名か。潭月殿にも連絡をせねばな」
「…しばらくは黙っておけ。ここに押しかけてきて騒々しくなる」
「わかった。しばらくは親子3人の時を楽しむといい。私もとうとう爺になったのだな。ふふふ」
含み笑いをしながら晴明が去ると、主さまは息吹の寝顔を見つめて戻って来てくれた喜びを噛み締めた。
…こんな腹の傷など、惜しくはない。
息吹が怪我ひとつしなかったことこそが、大切。
「息吹……息吹…」
何度も名を呼んでいるうちに主さまも眠りに落ちて、新月の光が降り注ぐ。
はっとなって身体を起こした主さまは、久々に息吹に触れることができて早速感情的になりそうになった主さまは、小さな角を撫でて泣き止ませた。
息吹は顔を真っ赤にして口ごもり、主さまも耳を真っ赤にしてうろたえる。
「…すまない」
「う、ううん、主さま寝た方がいいよ。お腹に穴が空いてるんだから。もう大丈夫なの…?」
「地主神の薬が効いたようだ。あれが無ければあるいは…」
怖い想像が頭を駆け巡った息吹は、むにゃむにゃ口を動かしている朔を抱きしめてふわりと笑った。
「動けるようになったら、一緒に地主神の祠に行こう」
「うん。あと…椿姫さんはどうなっちゃうのかなあ?」
「晴明がどうにかする。俺も方法を探してみる。…お前は気にせず朔に集中してくれ」
「はい。朔ちゃん主さまに似て本当に可愛い。きっとかっこよくなって引っ張りだこになっちゃうね」
身体を横たえた主さまは、頬が熱くなるのを感じながら顔を背けて息吹を見ることができなくなった。
主さまがそんな反応を見せることをわかっていた息吹は、あたたかい朔を抱っこしているうちに眠たくなっていつの間にか眠りに落ちてしまった。
「息吹は寝たのか。気力体力ともに使い果たしただろうからねえ」
「晴明…」
部屋へ入って来た晴明は、すやすや眠っている息吹と赤子を微笑ましく見つめて袖を払って座った。
「もう名はつけたのかい?」
「…朔と名付けた」
「ああ、やはり月の名か。潭月殿にも連絡をせねばな」
「…しばらくは黙っておけ。ここに押しかけてきて騒々しくなる」
「わかった。しばらくは親子3人の時を楽しむといい。私もとうとう爺になったのだな。ふふふ」
含み笑いをしながら晴明が去ると、主さまは息吹の寝顔を見つめて戻って来てくれた喜びを噛み締めた。
…こんな腹の傷など、惜しくはない。
息吹が怪我ひとつしなかったことこそが、大切。
「息吹……息吹…」
何度も名を呼んでいるうちに主さまも眠りに落ちて、新月の光が降り注ぐ。