主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-②
「え、私も一緒に?」
息吹の瞳を輝かせた一言を発したのは、いつものように縁側で日課となっている歓談をしていた椿姫だった。
酒呑童子と再び想いが通じ合ってからというもののますます美しさに磨きがかかり、微笑んだその儚い笑みも美しく、息吹をぽうっとさせる。
「もし泉が見つかったらぜひ。この呪いが解かれる時を息吹さんに見守って頂きたいんです。…解ければ、の話ですが…」
「父様が見つけた方法だもの、絶対大丈夫です!今日主さまに一緒に連れて行ってもらえるようお願いしてみますね」
「ええ、ぜひ」
――その会話を庭に降りて聞いていた酒呑童子は、腕に抱いた朔を見下ろしながらぽつりと呟く。
「あの男がそれを許すものか」
「え?今なんて?」
「…別になんでも。…俺も探索に加わりたい」
「じゃあそれも主さまにお願いしてみます」
部屋で寝ていた主さまは、そんな会話をまどろみながら聞いていて一瞬で覚醒すると、がばっと起き上がった。
やはり、という思いと息吹の懇願を断り切れるのかという不安が入り混じり、部屋の中でうろうろ行ったり来たりを繰り返していると、息吹が入って来た。
「主さま起きてたの?」
「…今起きた」
「おはようございます。主さま大切なお話があるの。聞いてもらえる?」
きちんと正座して微笑んでいる息吹かた目が離せなくなった主さまは、硬い表情になりつつも少し離れた場所に座ってなるべく平静を装う。
「…なんだ」
「泉が見つかったら私も一緒に連れて行ってほしいの。椿姫さんにお願いされたし、私も行きたいから」
「…お前が行ってどうする。危険な場所かもしれないんだぞ」
「その時は主さまが守ってくれるでしょ?」
黙り込んだ主さまの険しい表情を見た息吹は、唇を半開きにさせて膝をつきながら主さまににじり寄った。
「駄目…なの…?」
「…お前を危険な場所には連れて行きたくはない。それはわかってくれ」
息吹が少し肩を落としたのを見てざわりと心が揺れたが、例え喧嘩になったとしても息吹と永遠に離れてしまうよりはましだと何度も言い聞かせた主さまは、つい内心願った。
泉など見つからなければいい、と。
息吹の瞳を輝かせた一言を発したのは、いつものように縁側で日課となっている歓談をしていた椿姫だった。
酒呑童子と再び想いが通じ合ってからというもののますます美しさに磨きがかかり、微笑んだその儚い笑みも美しく、息吹をぽうっとさせる。
「もし泉が見つかったらぜひ。この呪いが解かれる時を息吹さんに見守って頂きたいんです。…解ければ、の話ですが…」
「父様が見つけた方法だもの、絶対大丈夫です!今日主さまに一緒に連れて行ってもらえるようお願いしてみますね」
「ええ、ぜひ」
――その会話を庭に降りて聞いていた酒呑童子は、腕に抱いた朔を見下ろしながらぽつりと呟く。
「あの男がそれを許すものか」
「え?今なんて?」
「…別になんでも。…俺も探索に加わりたい」
「じゃあそれも主さまにお願いしてみます」
部屋で寝ていた主さまは、そんな会話をまどろみながら聞いていて一瞬で覚醒すると、がばっと起き上がった。
やはり、という思いと息吹の懇願を断り切れるのかという不安が入り混じり、部屋の中でうろうろ行ったり来たりを繰り返していると、息吹が入って来た。
「主さま起きてたの?」
「…今起きた」
「おはようございます。主さま大切なお話があるの。聞いてもらえる?」
きちんと正座して微笑んでいる息吹かた目が離せなくなった主さまは、硬い表情になりつつも少し離れた場所に座ってなるべく平静を装う。
「…なんだ」
「泉が見つかったら私も一緒に連れて行ってほしいの。椿姫さんにお願いされたし、私も行きたいから」
「…お前が行ってどうする。危険な場所かもしれないんだぞ」
「その時は主さまが守ってくれるでしょ?」
黙り込んだ主さまの険しい表情を見た息吹は、唇を半開きにさせて膝をつきながら主さまににじり寄った。
「駄目…なの…?」
「…お前を危険な場所には連れて行きたくはない。それはわかってくれ」
息吹が少し肩を落としたのを見てざわりと心が揺れたが、例え喧嘩になったとしても息吹と永遠に離れてしまうよりはましだと何度も言い聞かせた主さまは、つい内心願った。
泉など見つからなければいい、と。