主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-②
泉に脚を浸す。
驚くほどに冷たいと同時に、体内を悪寒が走り抜けた。
つま先から膝、膝から腰へーー
ぞくぞくと湧き上がってくる悪寒は椿姫を苦しめて、身体がくの字に曲がった。
「椿姫!」
「気持ち…わる…っ」
悪しきものが聖なる水から逃げようと上へ上へと向かっているような感覚。
それと同時に、水に浸した部分は金色の光に包まれて、明らかに悪しきものに作用しているように見えた。
「大丈夫か!」
「は、い…っ」
体内で暴れ狂うものに打ち勝たなければ望んでいるものは手に入らないのだ。
愛して、憎んで…そしてやっぱり憎み切れなくて、手を繋ぎ合った酒呑童子は、我が身を喰らおうと向かってくる妖たちと戦っている。
今現在、誰もが戦っているーー
「私は…負け、ない…!」
明らかに効いている。
だからこそ、こんなに苦しいのだ。
そう自身に言い聞かせた椿姫は、意を決して全身を泉に浸して泉へと潜った。
瞬間ーー
泉は金色の光に包まれて、全員の視界を奪った。
上空で一挙手一投足見守っていた主さまも閃光を放つ泉に視界を焼かれたが、すぐに降下して戦っている酒呑童子に背中を合わせて自らも刀を抜く。
「どうなっている」
「俺にもわからない!椿姫!」
呼びかけれど反応はない。
こぽこぽと泡を浮かべている泉を食い入るように見つめているとーー
「…椿……?」
泡が浮かんでいる場所を中心にして、金色の光が収まってゆく。
土着の妖を蹴散らして刀を収めた銀も主さまの傍らへと移動すると、身体を傾けて泉を覗き込んだ。
「終わったのか?」
「恐らくは。だが俺たちにはこれ以上近付けない」
十数秒間待った。
もう駄目なのか、と諦めかけた時、水面が揺らいで、ゆっくりと椿姫が姿を現す。
一糸纏わぬ裸体はただただ神々しく、酒呑童子は泉から上がってきた椿姫にすぐさま着物を巻きつけると、恐る恐る頰へと手を伸ばした。
「椿姫……?」
「彼方様…」
柔和で美しい笑顔。
それが、椿姫の答え。
驚くほどに冷たいと同時に、体内を悪寒が走り抜けた。
つま先から膝、膝から腰へーー
ぞくぞくと湧き上がってくる悪寒は椿姫を苦しめて、身体がくの字に曲がった。
「椿姫!」
「気持ち…わる…っ」
悪しきものが聖なる水から逃げようと上へ上へと向かっているような感覚。
それと同時に、水に浸した部分は金色の光に包まれて、明らかに悪しきものに作用しているように見えた。
「大丈夫か!」
「は、い…っ」
体内で暴れ狂うものに打ち勝たなければ望んでいるものは手に入らないのだ。
愛して、憎んで…そしてやっぱり憎み切れなくて、手を繋ぎ合った酒呑童子は、我が身を喰らおうと向かってくる妖たちと戦っている。
今現在、誰もが戦っているーー
「私は…負け、ない…!」
明らかに効いている。
だからこそ、こんなに苦しいのだ。
そう自身に言い聞かせた椿姫は、意を決して全身を泉に浸して泉へと潜った。
瞬間ーー
泉は金色の光に包まれて、全員の視界を奪った。
上空で一挙手一投足見守っていた主さまも閃光を放つ泉に視界を焼かれたが、すぐに降下して戦っている酒呑童子に背中を合わせて自らも刀を抜く。
「どうなっている」
「俺にもわからない!椿姫!」
呼びかけれど反応はない。
こぽこぽと泡を浮かべている泉を食い入るように見つめているとーー
「…椿……?」
泡が浮かんでいる場所を中心にして、金色の光が収まってゆく。
土着の妖を蹴散らして刀を収めた銀も主さまの傍らへと移動すると、身体を傾けて泉を覗き込んだ。
「終わったのか?」
「恐らくは。だが俺たちにはこれ以上近付けない」
十数秒間待った。
もう駄目なのか、と諦めかけた時、水面が揺らいで、ゆっくりと椿姫が姿を現す。
一糸纏わぬ裸体はただただ神々しく、酒呑童子は泉から上がってきた椿姫にすぐさま着物を巻きつけると、恐る恐る頰へと手を伸ばした。
「椿姫……?」
「彼方様…」
柔和で美しい笑顔。
それが、椿姫の答え。