主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-②
…だがよくよく考えると、まだ昼だ。
木陰とはいえここで裸になってしまえば何もかも見られてしまうのは明白で、急に怖気づいた息吹は主さまの腕の中でもがいて顔を上げると、袖をぎゅっと握った。
「や、やっぱ駄目!」
「はあ?お前…その気にさせておいてそれはないんじゃないのか?」
「で、でもほら、お風呂にも入ってないし!まだお昼だし!主さま、ここに連れて来てくれてありがとうっ」
「あ、おい…」
腕の中からするりと抜け出られて向日葵の花畑の方へと走って行ってしまった息吹に呆然とした主さまは、がりがりと髪をかき上げながら大きなため息をついた。
新婚生活はとても楽しい。
楽しいけれど…息吹と2人きりになれる時間がほとんど無いし、いちゃつきたくてもそれを口に出せる程素直な性格をしていない主さまにとっては悩みの種だ。
「息吹、どこだ?」
息吹を追って重たい腰を上げて向日葵の花をかき分けながら進んで行くと、一際背の高い向日葵を見上げながら瞳を輝かせていた。
「主さま、どこまで行っても黄金の花!こんなに群生してるなんてすごいよねっ」
「恐らく他の大陸から風に乗って来た種が増えたんだろう。…もう誘ったりしないからこっちに来い。…ゆっくりしたい」
――主さまが“ゆっくりしたい”という時は、2人きりになりたいということ。
主さまの難しい性格を知っている息吹は、大人しく手を引かれて木陰に戻されると、正座をしてぽんぽんと膝を叩いた。
「じゃあ主さま、膝枕をしてあげる。ねえ主さま…毎日百鬼夜行ご苦労様です。疲れたりしないの?嫌になったりしないの?」
無表情を装いながらも息吹の膝枕にあやかれた主さまは、見下ろしてくる息吹を見上げながら手を伸ばして息吹の白い頬に触れた。
「それはない。百鬼を率いるのは代々俺の家に引き継がれる宿命だ。俺は長子としてそれを遂行しなければならない義務がある」
「じゃあやっぱり私と主さまとの間に男の子の赤ちゃんができないと、主さまはゆっくりできないってことなんだよね?」
「そういうことだな。…そう焦らずともいいじゃないか。俺はお前との新婚生活をまだまだ楽しみたいんだ」
「主さま…」
主さまと息吹はぽっと頬を赤く染めて、ゆっくりと唇を重ねた。
木陰とはいえここで裸になってしまえば何もかも見られてしまうのは明白で、急に怖気づいた息吹は主さまの腕の中でもがいて顔を上げると、袖をぎゅっと握った。
「や、やっぱ駄目!」
「はあ?お前…その気にさせておいてそれはないんじゃないのか?」
「で、でもほら、お風呂にも入ってないし!まだお昼だし!主さま、ここに連れて来てくれてありがとうっ」
「あ、おい…」
腕の中からするりと抜け出られて向日葵の花畑の方へと走って行ってしまった息吹に呆然とした主さまは、がりがりと髪をかき上げながら大きなため息をついた。
新婚生活はとても楽しい。
楽しいけれど…息吹と2人きりになれる時間がほとんど無いし、いちゃつきたくてもそれを口に出せる程素直な性格をしていない主さまにとっては悩みの種だ。
「息吹、どこだ?」
息吹を追って重たい腰を上げて向日葵の花をかき分けながら進んで行くと、一際背の高い向日葵を見上げながら瞳を輝かせていた。
「主さま、どこまで行っても黄金の花!こんなに群生してるなんてすごいよねっ」
「恐らく他の大陸から風に乗って来た種が増えたんだろう。…もう誘ったりしないからこっちに来い。…ゆっくりしたい」
――主さまが“ゆっくりしたい”という時は、2人きりになりたいということ。
主さまの難しい性格を知っている息吹は、大人しく手を引かれて木陰に戻されると、正座をしてぽんぽんと膝を叩いた。
「じゃあ主さま、膝枕をしてあげる。ねえ主さま…毎日百鬼夜行ご苦労様です。疲れたりしないの?嫌になったりしないの?」
無表情を装いながらも息吹の膝枕にあやかれた主さまは、見下ろしてくる息吹を見上げながら手を伸ばして息吹の白い頬に触れた。
「それはない。百鬼を率いるのは代々俺の家に引き継がれる宿命だ。俺は長子としてそれを遂行しなければならない義務がある」
「じゃあやっぱり私と主さまとの間に男の子の赤ちゃんができないと、主さまはゆっくりできないってことなんだよね?」
「そういうことだな。…そう焦らずともいいじゃないか。俺はお前との新婚生活をまだまだ楽しみたいんだ」
「主さま…」
主さまと息吹はぽっと頬を赤く染めて、ゆっくりと唇を重ねた。