先生、あのね。
◆第1話
県立万町高校。
創立されて間もないこの高校は、校舎がとても綺麗で、使われていない教室や資料室がたくさんある。
そう。
私のサボり場所には最適。
「んーっ!いい天気だねぇ…」
ぐーっと全身をゆっくりと伸ばしながら、目の前に広がる雲一つ無い真っ青な空を見上げた。
遠くで微かに一時間目のチャイムの音が聞こえたが、私はそれを聞こえなかったかのように、自分の耳にイヤホンをはめる。
スローテンポで流れてくるそのメロディを聞きながら、私はゆっくりと自分の瞼を閉じた。
浜崎菜摘(ハマサキナツミ) 17歳。
今年の春に高校二年生になったばかりの女子高生。
学校は好き。
でも、勉強をすることが嫌い。
昔から勉強だけは苦手だった。
いつからか学校の勉強についていけなくなって、学校に来て授業を受けることも億劫になって。
今じゃ神出鬼没遅刻間、なんてクラスであだ名をつけられている。
まぁ、別にいいけどね。
友達とか要らないし。
幼い頃に父親と姉を亡くして、それからはずっと母と二人で暮らしてた。
でも、そんな母は
大病院の院長をしていて、人一倍勉強をすることにうるさい人だった。
そんなお母さんが嫌で、私は二年前に家を出た。
…薄情なお母さんだよね。
娘が出て行こうとしているのにため息一つ吐かずに
「勝手にしなさい」
だもんね。
それからはずっと
自由気ままに生きてきた。
好きな音楽を聞きながら、青い空の真下でお昼寝。
これ以上の安らぎは無い。
これが私が学校に来る理由。
そう、思っていた。