泣き虫総長と5ヶ月恋愛
*司輝人*

次期総長ともなると、なかなか泣けない。
なのに今日俺は総長になった。

もう泣けない。

泣いちゃいけねぇ。

そう考えながら涙を堪えていた。

「…た…はぁはぁ」

ボソッと呟いた声とともに、足音が近づく。

俺の目の前で止まった人を見上げる。

その人は、俺の顔を見るなり目尻を下げた。

「ねぇ。泣きたければ泣いていいんだよ」

見知らぬ人は髪を横に結んでいた。

俺と同じぐらいかそれより下。

でもその人が醸し出す雰囲気や言葉は、

充分過ぎるほど俺を包み込んでいた。

その人がまた微笑む。

俺は涙を堪えることができなくなっていた。

カイロを押し付け、

隣に座るその人は、涙を流す俺の背中を撫でた。

「俺、情けねぇんだ。戦わねぇといけねぇのに、
人を殴んのが辛れぇ。もうすぐてっぺんなのによ」

弱音なんて、人の前で吐くもんじゃねぇ。

そう思っていたのに、弱音を吐いた俺。

自分自身が驚きを隠せなかった。

その人は、情けない男だと思っただろうか。

でもその人は、嘲笑うことも口出しすることもしなかった。

ただひたすら、背中を撫でていてくれた。
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