泣き虫総長と5ヶ月恋愛
ブロロロロ…
特徴のあるエンジン音。
だんだん近づいてくる。
「司輝人。落ち着いたか?」
「あぁ」
立ち上がりベンチ裏の単車を勇翔の元まで運ぶ。
「あっあの…」
少し恥ずかしかった。
泣いてしまった所を見られた上に、
立ち上がった俺の格好は特攻服で、
背中には『輝夜蘭』の文字。
輝夜蘭はここら辺で一番デカイ暴走族。
知らない人は居ないと聞いたことがある。
そんなチームに居るやつが、
泣き虫で人を殴るのが怖いなんてかっこわりぃ。
「ありがとうな。助かった」
そう言いバイクに跨がる。
なぜか、その人をもう一度見たくなった。
単車のミラー越しにその人を見つめながら、
エンジンをふかす。
綺麗な栗色の髪を綺麗な蝶の髪止めで止めていたその人は、
真っ直ぐに俺の背中を見ていた。
その姿もまた綺麗で、
俺は振り向きざまに自分の胸を2回トントンと叩き、
その人を指差し笑った。
『俺の心はあなたに奪われた』
そういう意味を込めて。