泣き虫総長と5ヶ月恋愛
公園を出て道路を勇翔と並走する。
「司輝人、あの女誰なんだ?」
勇翔は真っ直ぐ前を見つめたまま聞く。
「知らねぇ。でも俺の気持ちわかったみてぇだ」
頭からあの人が離れない。
「司輝人が一目惚れとは意外だな。しかも輝夜蘭の総長になったその晩に」
お前はプレイボーイかよ。
と笑う勇翔を横目に、勇翔が言った“一目惚れ”が頭の中を渦巻いていた。
俺が一目惚れ?んなわけ...あるかもしれねぇ…。
「名前聞いたのか?」
半分にやけながら聞く勇翔。
「あっ。忘れた…」
「忘れちまったのかよ!!もう無理だな。諦めろ」
恥ずかしさのあまり名前聞きそびれるなんて、俺はアホか。いや…アホだ。
ってか、向こう方に失礼だろ。
俺はバカなのか。
「う~んう~ん言いながら眉間に皺寄せんなよ」
冷たい勇翔の一言で、現実に引き戻る。
「まぁ…。見つかるだろ?」
元気出せよ~。
と、ケラケラ笑いながら言うコイツは全く心配していないだろう。
しばらく他愛もない話をしながら単車を進めると、
高い塀に囲まれた廃工場が見えてきた。
どデカイ廃工場が俺らの溜まり場だ。