カラフル

「目の周り、真っ黒じゃん。パンダみてぇ」

涙で滲んだアイラインを親指でふき取りながら、馬鹿にしてくる彼。

「ちょ……見ないでよ」

慌てるあたしは、顔を背けながら、まぶたや目尻を気にしていた。

「そりゃあ、野島さんと比べたら、お前の顔は負けてるかもしんねぇけどさ」

洋介は笑うのをやめて、小さな声で囁いてくる。

「お前だって笑ってれば、少しは……マシなんじゃねぇの?」

いつもとは少し違う、真剣な声。

振り返って顔を見たけれど、洋介はあっちを向いたままで、表情は確認できなかった。

だけど、あたしの心はほわっと温かくなっていく。
< 98 / 155 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop