片想い
軽く会釈をし謝りながら、顔を上げた店員を見て、菜月は、一瞬、息が止まった。
だが、すぐに目を反らして、何事もなかったようにレディース商品の売り場に目線を戻した。幸いにも、佑介は、何も気付いていないようだった。
「すみません、これにします。」
「ありがとうございます。今、試着室のご用意しますね。」
そう言って、店員が離れた隙に、菜月は、「お手洗いに行ってくる」と佑介に声を掛け、店を出た。
菜月は、化粧室には行かずに、1つ下の階にあるカフェに入り、ホットココアを注文した。
“どうして、敏輝がここにいるの?”佑介の前では隠せた動揺も、1人になると途端に表れた。