片想い
「菜月ちゃん、そろそろ止めておいた方がいいよ。」
オーナーは、いつもより飲み過ぎな菜月を見て、心配していた。
「オーナー、私、幸せになれるのかな?」
菜月は、涼子が妊娠して結婚することを決心したにも関わらず、自分は、今だに敏輝の存在がちらつき、佑介との結婚を決め切れない自分自身に不安になり、つい思ったことを口に出してしまった。
しかし、オーナーは、菜月に優しく声を掛けた。
「なれるよ、自分の気持ちに素直になれば。」
ちょうど、その時、店のドアが開いた。菜月は、振り返らずグラスに視線を落したままだった。近づく足跡が菜月の隣で止まった。