片想い




キッチンで、お湯を沸かしている間、菜月は、どうやって話を切り出そうか考えていた。しかし、菜月の考えがまとまる前に、あっと言う間にお湯は沸き、インスタントコーヒーを入れ、ソファに座る敏輝に差し出した。



「ありがとう。」



敏輝は、コーヒーを一口飲み、すぐにマグカップをテーブルに戻した。そして、菜月が話し始めるのを待っていた。菜月は、深く深呼吸をして、覚悟を決め話し始めた。



「3年前、敏輝と別れてからもうこれ以上、好きになれる人はいないって思ってた。今の彼氏は、職場の人で付き合って1年が過ぎて、今度の誕生日にプロポーズするから考えといてって、言われたの。だけど、敏輝と再会してプロポーズされてからずっと考えてたの。どっちと結婚すれば幸せになれるんだろうって、でも、それじゃ駄目なんだって分かったの。私が、一緒に居て幸せにしたいのは、誰なんだろうって。」



「それに今日、空き巣だと勘違いして、不安になって連絡したのは、携帯に連絡先が入っている今の彼氏じゃなくて、指先が覚えていた敏輝だったの。自分が幸せにしたいのも、無意識に甘えられるのも全部、敏輝なんだって、」






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