片想い








「すごく、おいしかった。」



「予約した甲斐があったよ。」



フルコースを食べ終わって、食後のコーヒーを飲んでいた。料理は、もちろん美味しかったが、女性のピアニストが弾く演奏が、この後の展開がいつもと違うであろうことを、菜月は予想していた。



「菜月、あのさ、」



佑介が、話しだそうとしたその時、ピアノ演奏がジャズから誕生日を祝う曲に変わった。レストラン内がざわつき出したが、しだいに手拍子に変わっていった。菜月と佑介もよく分からなかったが、他の客と同じように手拍子をする。



そうすると、キッチンの方からウェイターが大きなケーキを押して、レストラン中央の席のカップルの前に運んだ。


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