片想い
*
「すごく、おいしかった。」
「予約した甲斐があったよ。」
フルコースを食べ終わって、食後のコーヒーを飲んでいた。料理は、もちろん美味しかったが、女性のピアニストが弾く演奏が、この後の展開がいつもと違うであろうことを、菜月は予想していた。
「菜月、あのさ、」
佑介が、話しだそうとしたその時、ピアノ演奏がジャズから誕生日を祝う曲に変わった。レストラン内がざわつき出したが、しだいに手拍子に変わっていった。菜月と佑介もよく分からなかったが、他の客と同じように手拍子をする。
そうすると、キッチンの方からウェイターが大きなケーキを押して、レストラン中央の席のカップルの前に運んだ。