片想い
「菜月、内定おめでとう。」
そう言いながら、敏輝は、さっき背中に隠した薔薇の花束を渡した。菜月は、びっくりした表情で受け取ったが、すぐに俯いてしまった。
「あんまり嬉しくなかった?」
敏輝が心配になり、菜月の顔を覗き込むと、菜月の頬は、涙で濡れていた。そして、菜月は、花束を自分の脇に置いて、敏輝の胸に飛び込んだ。敏輝は、優しく抱きしめ、菜月の髪をなでながらも、困った表情をしていた。菜月が泣いているのを、付き合ってから初めてみたからだ。
「最近、忙しくてゆっくり話も出来なかったし、お昼、電話した時もすぐに返事なかったから不安だった。」
「ごめんな、菜月には、色々我慢させてばっかりで。でも、これからは、こうやって俺に甘えて欲しいし、頼って欲しい。」