片想い
敏輝のその一言で、菜月は、やっと目線を雑誌から敏輝に移した。そして、横になっていた身体を起こし、ソファにきちんと座りなおした。敏輝は、菜月の隣に腰を下ろし、苦々しい表情で口を開き、話し始めた。
「実は、うちの会社は2、3年で転勤するのが当たり前なんだ。俺も、もう、こっちに来て3年目だったからそろそろかなとは、予想していた。」
「そうなんだ、次は、どこになったの?」
菜月は、敏輝の突然の言葉に動揺しながらも努めて冷静に先を促した。
「福岡。」
敏輝は、菜月の様子を伺いながらも話を続けた。