もしも僕だったら



「長いような、短いような……」

「何が?」
そろそろ授業が始まるのか、生徒達の机の上には教科書が置かれている。
俊斗は教科書をパラパラと捲りながら、俺に問いかけた。
「お前と再会するまでの時間。六年間、会ってなかったんだなー」
俺が頬杖をついて言うと、俊斗は目を細めて笑った。

「会いたかったか?」

俺に、と付け足して俺の真似をするように頬杖をつく。
「んー、まぁ、」
なんだか気恥ずかしくなって、目を逸らしてしまう。
けど、否定する理由もないから、曖昧に返事をする。
「俺も。まさかこんな所で会うなんてなー」
俊斗はそれでも嬉しそうに柔らかな笑みを見せる。
それは、昔の面影を残していた。
こんな所、というのは、此処は俺の実家の県外だった。
俺は祖母の家に居候していて、そこから学校へ通っている。
だから、此処で会うなんて、どちらも思っていなかったのだ。



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