もしも僕だったら
「なぁなぁ」
前の席の村井が俺を呼ぶ。
「今日転校生来るんだろ? 男かな、女の子かな? 女の子だったら可愛いといいな〜」
理想を思い描いているのか、なんとも幸せそうな表情だ。
けれど俺は、それを打ち消すように、
「…男だって聞いたけど」
夢の国の村井を現実世界のじゃぱにーずに引き戻した。
「なんだよ、男かよー!! 早く言えよな永瀬」
ぶーたれる村井を宥めていると、担任が教室に入ってきた。
「HR始めるぞー、…と、その前に、転校生を紹介する」
途端に、クラス内はざわめいた。
「矢野、」
担任が呼ぶと、男子生徒は教室に一歩踏み出した。
「……あ、」
一目見ただけで、こいつが誰なのかすぐにわかった。
何も変わってない。
相手も俺に気が付いたのか、少し驚いたような顔をしていた。