オオカミ少年。
「ごめんね多田くん」
「大丈夫、他の人から借りるよ」
優しく笑った多田くんは、やっぱり女の子を虜にする整った顔をしてる。
うちのクラスは密かに人気がある。理由は多田くんと、あたしの彼氏である中田にあるんだけど。
1、2を争うイケメンが2人ともこのクラスにいるもんだから、人気があって当然。
「ちょっと中田、ノート書かないの?」
去年に引き続き、日本史の先生は優しそうなおじいちゃんだから、喋っていても注意すらされない。
「んー、あ、書く」
「じゃあシャーペン持ってよ」
「筆箱忘れた」
「は?」
「うっそー」
嘘つきはまだまだ健在。
付き合う前も付き合ってからも、全く同じように毎日毎日嘘をつく。
「…書かないなら多田くんにノート貸すけど。」
「ごめんなさい書きます」
多田くんを敵視してるようだけど、決して仲が悪いわけじゃない。寧ろ仲いいのかも。
中田は特別何をしてるわけでもないのに、自然とこのクラスのムードメーカーになっている。どこにいても人気者。
そんな人だから、言わないだけで、あたしだって嫉妬することもある。
絶対、絶対言わないけど。