オオカミ少年。
「平山って字綺麗だよなー」
突然憎たらしいくらいにニコニコしながらそう言うもんだから、不意に心臓を掴まれた。
ほんと、心臓に悪い。
「中田は汚いもんね。」
「俺だって本気出せばこのくらい余裕だし。」
「はいはい」
最初こそはクラスのみんなもこの会話を聞いて「ほんとに付き合ってるの?」なんて聞いてきたけど、今はもう…
「うるせーぞ、リア充」
「教室でイチャイチャすんな!」
公認、というか…
新学期が始まった日の玄関での"あれ"を見ていた人が結構いたみたいで、付き合ってることが広まるのに時間はかからなかった。
寧ろ秒速。ものすごく早かった。
次の日にはもう、知らない人の方が少ないんじゃないのってくらいだった。
「バーカ、イチャイチャしてねぇよ!」
確かにイチャイチャしてない。
こんな会話、去年だってしてたし。去年の続きみたいなもんだから、寧ろ友達みたいだし。