オオカミ少年。

「こいつらのイチャイチャはこんなもんじゃねぇじゃん」

「そうだった」

「公開キスだもんなー」

あの日のことは時間がたった今でも話のネタにされる。その度に恥ずかしい。


「俺もやってみてー!」

「お前らバカにしてんだろ!」

さすがの中田もこの話が出てくると恥ずかしいみたいで、少しだけ顔が赤い。


そういえばあの後、顔を真っ赤にして「二度とやんねー」なんて言ってたなぁ。

あの行動の理由はきっと、あたしのためでもあったんだろう。だから恥ずかしいのにあんなこと。


「平山さんごめん、やっぱりノート貸してほしいんだけど。」

申し訳なさそうに謝る多田くん。

そうだ。周りにノートをきちんのとるような子はいないんだよね。みんな寝てるし。

「全然いいよ、はい」


男子たちと話してる中田は、あたしが机の上からこっそりノートを取ったことなんて、全く気づいていない。

やっぱり書く気なかったわけね。


なんて、黒板をボーッと眺めながら考える。

「その眼鏡、度入ってないの?」

「入ってるよ。でも最近また目が悪くなったみたいでさ、結構困ってんだけど」

「そんなに悪いの?」

「かけてみる?」

なんて言って多田くんは、自分の黒ぶち眼鏡をあたしに差し出した。


< 102 / 152 >

この作品をシェア

pagetop