オオカミ少年。
小さいときから目が良かったあたしには縁のなかったもの。少しの好奇心で、それを受け取った。
「うわっ…」
かけてみると、やっぱりあたしには合わなくて、目が回るし視界はボヤけるしで気分が悪くなりそう。
「眼鏡ってこんな感じなんだね。」
「うん、俺はそれがないと全然見えないから、仕方なくね。眼鏡好きじゃないけど」
「コンタクトは?」
「俺コンタクトは目に合わないみたいで、たまにつけれる日だけつけてるんだ。」
そういえば、授業中に眼鏡をしてない日があった。あの日はコンタクトをしてたんだ。
「大変だね。」
目が良いあたしには分からない苦労が、多田くんにはあるんだ。
「平山さんは目良いから眼鏡なんて必要ないもんなー。」
「うん。あ、でもあたし眼鏡に憧れてた時期あったなぁ。」
「へぇ、そうなんだ。似合ってるよ」
そう言う多田くんの表情はボヤけて見えない。きっと多田くんにも、あたしの表情は見えてないんだろう。
「そう?」
「うん、似合ってる」
多田くんの顔が少し近づいて、何度もうんうん、と頷いてるのが見えた。
「ありがと」
眼鏡を外そうと柄に手をかけたときだった。