オオカミ少年。

「いたっ!」

頭に鈍い痛み。

咄嗟に痛いと言ってしまったけど、言うほど痛くもなかった。反射的に言ってしまっただけ。


「何それ。」

眼鏡をしたまま振り向くと、あたしの頭にチョップした中田が不機嫌そうにあたしを見てる。


「痛いなぁ、何よもう。」

「お前誰だよ」

「は、平山ですけど。」

「んなこと分かってるわ!」

だったら何が言いたい。

「ちょっと中田意味分かんないんだけど。」


ボヤける視界のせいで気分が悪くなってきた。そんなボヤける視界の中でも、中田が怒ってることは何となく分かる。


「勉強しろよ。」

「その言葉そっくりそのまま返すよ。」

「それをまた返すわ。」

「返すなバカ男。」

何だか喧嘩になってしまいそうだったから、これ以上中田が不機嫌になる前に眼鏡をとった。


「はい多田くん。ごめんね、借りちゃって」

「いや全然、こっちこそノートありがとな」


色々と申し訳なさそうな多田くんのその言葉にさらに不機嫌になる中田。

原因は多田くんか。

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