オオカミ少年。
何も言わずに先に入って、ちょうど大人が2人しか座れないベンチに腰掛けた。
あとから来た中田も座る。
「……何で怒ってるの」
改めて中田に聞けば、気まずそうに目を反らしてポツリと呟いた。
「お前が多田にノート貸すから…」
小さな声で、近くにいるあたしでも聞き取るのがやっとだった。
「は?ノート?」
あたしが多田くんにノートを貸したから怒ってる、って言いたいんだよね?
…………そんなことで?
「…それだけ?」
「…それだけ。」
久しぶりに中田が怒ってるから何事かと思えば、こんなに小さいことで嫉妬してるとは…
「…席が近いから貸しただけだよ。多田くん、目悪いから黒板の文字が見えづらいんだって」
「知ってる。」
知ってんのかよ。
「平山さ、考えてみ?」
例えばさ、なんて言いながら話始める中田はやっぱりどこかふざけているように見えた。