オオカミ少年。

「だってあたしは中田が好きだもん。多田くんにいくらアプローチされたって靡かないね。」


自信満々に言ってやった。

すると案の定中田はポカーンとしてて、あたしが言ったことを理解してるようだった。


「…あっ、そ。」

そう言ってうつ向いた。

だけど照れてるのバレバレ。髪の隙間から見える耳が真っ赤。きっと赤くなった顔を隠すためにうつ向いたんだ。


「照れてんの?」

「照れてねぇし。」

いつもと立場が逆転してることが少しだけ可笑しくて、思わず笑ってしまいそうになった。


「安心した?」

「……した、けど。」

ん?けど?

「やっぱさ、俺のってことにしときたいから」


顔をあげて、いつものように悪戯に笑う。

その笑顔はまるで、悪魔のようだった。


「俺のこと"悠"って呼んでよ、歩未。」

「え………い、今歩未って!!」


付き合ってから一度も呼ばなかったあたしの名前。周りから変だと言われることもあった。

だけど中田は気にしてないみたいだったし…


「俺も歩未って呼ぶ。」

この変化は何?

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