オオカミ少年。

「何なの急に?」

「俺のこと中田って呼ぶ女子はいくらでもいるし、平山のことを平山って呼ぶ男子もいくらでもいるし。」

確かにそんなの数えきれないくらいいる。


「だから俺だけ特別。」

今まで中田って呼んでたのに急に名前で呼ぶなんて、ちょっとハードルが高い。

いや、でも……


「急には無理…」

「悠って呼ばなかったら俺返事しねぇよ?」

「は、何でよ!」

「何でも。決定な!」


心底楽しそうに立ち上がって、あたしの手を引っ張って歩き出した。

ほんの数十分前まで怒って喋らなかった中田が、今はあんなに楽しそうに笑ってる。

……意外と単純なのか?


「中田って単純…」

いつもならそんな言葉に反応する中田だけど、今日は何も言わない。

あ……そうか。


「っーもう!」

悠って呼ばなきゃ反応もしてくれないわけだ。

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