オオカミ少年。

こうなったら意地でも呼んでやらないと、完全に黙ることにした。

呼ぶのが嫌なわけじゃない。ただ、急に名前で呼べるほど出来た人間じゃないし、普通に無理だし。


その点中田は……

照れるどころか何事もなかったかのようにあたしの名前を呼ぶ。

いつでも一枚上手なのが悔しい。


「もう着きますけど。」

「分かってます。」

早く呼べ、ということなんだろう。


どうなってんの中田。

あたし、あんたの恥ずかしいポイントが全く分からないよ。せめて分かれば立場逆転出来るのに!


「頑固だなー」

「中田に言われたくない。」

"中田"と呼ぶとまたそっぽを向いてわざとらしく無反応な態度をとる。


これは、癖だよ。

出会ってから今までずっと中田って呼んできたし、これからもそう呼ぶつもりだったから。

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