オオカミ少年。

「何だろうね。」

『あー、もう。俺学校行けばよかった…』

「中田熱あるんでしょ?ごめんね、あたしのせいで。」

『いや、平山のせいじゃねぇよ。俺が勝手に行ったんだし、明日には治ってるって。』

その中田の言葉と同時くらいだった。あたしの携帯は後ろにいた中田の友達に奪われた。


「あ、中田ー?今から平山ちゃんがお前の家行くから、見つかったらマズイものは隠しとけよー。」

「マズイもの?」

隣にいたあたしがそう言うと、携帯を持ってる人とは別のクラスメートが言った。


「平山ちゃん、男には色々あるんだよ。」

「ふーん、そっか。」

何だかこれ以上聞くのはマズイ気がして、聞くのをやめた。


「いいか中田、風邪が移るようなことは絶対すんなよ。」

そんなことを言って電話を切ったクラスメートが、携帯をあたしに渡して早く行くように言った。


「行ってらっしゃい、歩未。」

「行ってきます!」

あたしの友達もどこか楽しそうに言って手を振ってくる。

ほんと、みんなあたしたちのことからかいすぎっていうか。あたしたちで遊びすぎだよね。

なんて思いながらも、あたしもこの状況を少しだけ楽しんでしまってる。

それはきっと中田も。

< 137 / 152 >

この作品をシェア

pagetop