オオカミ少年。
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―ピンポーン…
少しドキドキしながらチャイムを押す。表札には【中田】の文字。
ここに来るのは初めてじゃないけど、昨日の中田を思い出すと、なぜか緊張してしまう。
…昨日の中田もこんな気持ちだったのかな。
なんて考えてると、家の中から聞こえてくる足音。階段を駆け降りてるみたいだった。
―ガチャッ!
「平山!」
勢いよくドアが開いて、いつもより顔の赤い中田が飛び出してきた。
「やぁ、マイダーリン。」
「マイダーリン!?」
「中田の真似だよバカ。ほら、家の中入って。」
無理矢理背中を押したけど、中田ってば重くてなかなか前に進んでくれない。
「やべ、頭クラクラする。」
「走るからだよ。」
なんて言ったけど、原因はあたしにあるわけだから申し訳ない。やっぱりすぐに帰ってもらうべきだったな。
「平山が来るって言ったから、俺すっげぇ急いで部屋片付けた。」
「中田の部屋が汚いことくらい知ってるから別にいいのに。」
「失礼だなー。」
いつもより元気のない中田を見てると、どこか不安になって。やっぱり中田は元気な方がいいよ。