オオカミ少年。
「ゼリー買ってきたよ、食べる?」
「…後で食う。」
「食欲ない?」
「んー…。」
「じゃあ、寝てなよ。」
「うん。平山、手握っててよ。」
「何でよ。」
熱があっても意地悪な部分は出てくるようで、いつもみたいに笑ってそう言った。
「いい夢見られそうだし。」
トローンとした目でそんなことを言われたら、断れるわけなくて。
暖かい中田の手をギュッと握った。
「明日は来てね。」
「おう、明日までには治す。」
中田がいない学校はどこか物足りなくて、いつもよりも時間が長く感じた。
「早く治さないと何も出来ねぇし。」
「え?」
また、さっきと同じ悪戯っ子のような笑い方をして、あたしを見つめた。
「例えば、キスとか。」
中田の目はあたしの唇を捕らえていて、恥ずかしい、なんて思ったときにはもう手を引っ張られて中田の顔が目の前に。