オオカミ少年。
唇から伝わった熱が。
フワッと香った中田の匂いが。
優しく笑う中田の顔が。
その全部が、あたしの頭をフリーズさせた。
…あれ、あたし、キスされた?
なんて思ったときにはもうお店の外で。ガラス越しに見える中田は机に伏せて寝てる。
…何だこれ。何だこれ。
「えっ、何!?」
どうなってんだ? 状況は?何で?
唇に触れると、さっきの一瞬の熱をすぐに思い出せた。すぐ近くにあった中田の顔も。
心臓が無駄にバクバク動いて。
それは、あたしの頭を混乱させるには十分な、一瞬の出来事だった。