オオカミ少年。
授業中の隣人。
「平山っ」
「…………」
「ひーらーやーまっ」
「うるさいなぁ、何よ。」
数学の授業中、隣の席の男は小声であたしに話しかけてくる。先生にバレないように。
数学の先生は若くてイケメンだけど、めちゃくちゃ怖い。だから授業中はなるべく静かに目立たないようにしてる。
「多田がな、お前こと可愛いって言ってたよ。」
「うそっ、ほんとにっ?」
「うん、嘘。」
「もう死んで。」
授業中にしょうもない嘘をつくなよ。 そしてあたしも同じ手に何度も引っ掛かるな。
「俺がいないと寂しいんだろ?」
あぁ、昨日の…
あれは一時の気の迷い。ほんとはそんなこと一ミリも思ってないんだから。