オオカミ少年。
「えー、もう忘れたのかよ。あさって俺の誕生日じゃん!祝って!」
「へー。お友達に祝ってもらったら?」
そうだ。そうだった、4月1日は中田の誕生日だった。そういえば聞いたことあるわ。
すっかり忘れてたけど。
「いーや、ダメだ。」
「何でよ」
首を横にブンブン降って、前を歩く中田。何か、初めて会ったときとキャラ変わったなぁ。
「何でも!」
こんなにわがままだったっけ?
「じゃあ、明後日平山の家遊びに行くから!」
そう言って走り去っていく中田の背中を呆然と眺めた。あれ、遊びに行くとか言ってなかった?
「え?」
ぽつり呟いた声は、誰にも届くことなく、春の暖かい空気に溶けていった。