社長と極上の生活
差し出された医療用鋏。
一瞬にして、緊張が走る。
―――――おいっ!!
聞いてねぇぞ?!
「要、お願い」
「んっ……んー」
俺は震える手で鋏を手にし、
医師の指示の下、
我が子の臍の緒をこの手で……。
分娩後の処置をする為、
俺は分娩室の外へ出された。
すると、廊下には村岡と共に祖父母の姿が。
「要、おめでとう!!」
「本当に無事で何より」
「おめでとうございます、要様」
「うっ……ん……」
安堵からなのか、自然と涙が。
「あらあら」
カーッとなる目頭を押さえると、
祖母が優しく背中を擦ってくれた。
そこへ、
「はい、お父さん?」
看護師に抱かれた我が子が。
俺は恐る恐る我が子を手に。
ふわりと軽いのに何とも心地良い温かさ。
何とも言えない、その抱き心地は
生涯、忘れる事はないだろう。