社長と極上の生活
6 涙の理由
俺らの息子・斗賀が生まれて、
もうすぐ3か月が過ぎようとしている。
時が経つのは早いもので、
季節は秋から冬になろうとしている。
ピピピピピッ、ピピピピピッ
無機質な電子音が耳に届き、条件反射で腕を伸ばす。
………もう、6時か。
アラーム音で起こされた俺は、
心地良い布団の温もりからゆっくりと這い出て
ベッド下に脱ぎ捨てたスリッパを足先で拾う。
以前は、毎日のように甘い声音で
『おはよう、要』と起こされていたが、
妊娠中の入退院や産後の気遣いで
どうしても一緒には寝れないと悟った、俺。
こんな味気ない目覚めにも慣れてきたが、
やはり、杏花が隣りで寝てくれないと熟睡出来ない。
だが、授乳の度に起きる杏花に
俺の我が儘を突き通すワケにもいかず。
それとなく、機嫌の良さそうな時に
杏花へはアプローチをしてはみたのだが、
現状から言って『俺<斗賀』だという事実には変わりなし。
俺の事を忘れているんじゃないかと、気が気でない。