社長と極上の生活
洗面所で顔を洗い、リビングへ行くと
「おはようございます、要様」
「おはようございます」
既に朝食の準備に取り掛かっている村岡がキッチンにいた。
リビングテーブルの上に並べられている朝刊を手にして
ソファにゆっくりと腰を下ろすと、
何も言わなくても、目の前にエスプレッソが置かれる。
「ありがとう」
「いえ」
たった一言だけ残して、村岡は再びキッチンへと。
俺は珈琲を飲みながら、朝刊4紙に目を通す。
会社の経営をしているのだから、これくらいは当然の事。
けれど、不意に思う事がある。
この朝刊に目を通す時間を
杏花の横で過ごす時間には出来ないものかと。
まぁ、こればかりはどうしようもないか。
ざっと4紙に目を通し終わる頃、
「要様、朝食のご用意が出来ました」
「ん、ありがとう」
俺がダイニングへ着くと
村岡は入れ替わるうように席を外す。
これもいつもと変わらない光景なのだが、
何故か、この食事の時間さえも虚しく感じる。
―――――――前は、杏花と笑い合って食べてたのに。