社長と極上の生活
手早く朝食を済ませた俺は身支度をする為、寝室へ。
クローゼットを覗き、再び溜息が零れ出す。
―――――杏花に選んで貰いたい
心の中で呟きながら、目についたスーツを手に取った。
ネクタイを締め、鏡の前で視線が彷徨う。
解っている、理解している、納得している筈なのに。
無意識に鏡越しに杏花がいるんじゃないかと探してしまうんだ。
――――――――俺の片思いは日増しに重症化していた。
階下のオフィスフロアへ向かうその前に
俺は足音を立てず、ゲストルームへ足を運ぶ。
静かに室内に入ると、
愛しの杏花と愛息子の斗賀は
気持ち良さそうに寝息を立てている。
ゆっくりとベッドサイドに跪き
杏花の愛らしい寝顔を堪能する。
――――――俺の至福のひととき
出産しても変わらず、俺の視線を独占し
寝ているのにもかかわらず、俺をその気にさせる。
俺が今まで生きて来て、
1番手に負えなくて1番大事な女性だ。
頬にかかる乱れた髪をそっと指先で梳いて
指先の背で優しく頬を撫でると、